小鹿野町で紅葉狩り・二子山登山

年月日: 2013年10月27日(日)

行程: 二子山・坂本口の近くの駐車スペース出発(06:00)〜股峠(07:00)〜(東岳登り始めて間もなく鎖場で怖気づいて退却)〜股峠復帰(07:20)〜西岳(08:00-08:20)〜股峠に再び復帰(08:34-?)〜ローソク岩経由で西峰直下(09:30)〜安曇幹線1号線・223号鉄塔(10:30)〜二子山林道の支線出合い(11:00)〜国道299号線(11:59)〜志賀坂トンネル〜駐車地に帰着(12:45)

自家用車を11月に廃車することが決定した。長年行動を共にしたフォレスターを運転できるのもあと少し。台風が去った翌日の日曜日、埼玉県が快晴の予報につき、ドライブがてら軽く秩父で紅葉狩りを計画。土曜日の月例通院後に地形図だけ見て候補地を選定。@右足膝関節が疲労で軽く痛みを感じるのであまり無理せず短時間で回りたい、Aハイカーにはできるだけ遇いたくない、B地質・植生・景観等いずれかの興味の対象があること、という3条件で場所を小鹿野町に絞り込んだ。過去にウェブで秩父に関して調べものをした時でも二子山や両神山の情報には一切接しておらず、予備知識が全く無いのでモチベーションは十分。両神山は人気がありそうだし急峻で歩きにくそうだから自分の山歩きの対象外。二子山ならば静かな山歩きができるのではないか。見たことも聞いたこともなくても、地理的・地形的に石灰岩から成る切り立った山であることは明白。崖マークで等高線がないため起伏を読み取れない。地形図上には破線路が記されているのだからお気楽に稜線を辿れるのであろうと思った。今年春に御荷鉾山を縦走した際に見た真っ白な山(叶山)にも興味があるので、志賀坂峠に回るついでに近くで見たい。

小鹿野町訪問は初めて。国道299号を道なりに走って順調に現地着。魚尾道から分岐する林道に入ってすぐに二子山登山口の表示を見る。その少し先の仁平沢右岸のスペースに車を置いた。

車を降りてみると仁平沢から落水音が聞こえる。滝が在るようだ。まだ薄暗いので時間潰ししようと思い観瀑。台風通過の翌日であるから水量が多くて見ごたえ有り。予備知識が無いおかげで儲けものした気分。

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仁平沢の滝


右岸の植林斜面を適当に登って登山道に入った。登山道は一貫して沢沿いにあり、増水した沢を何度か渡りながら登っていく。所々道標があるが、沢沿いの道はダレて傾斜がついて決して安全とは言い難い。こんな場所戻ってくるのは嫌だなと思いながら登って行った(ほんの序の口であることをまだ知らない。)。ローソク岩方面に向かう道を左に見やって程なく股峠着。

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股峠にある案内図


股峠にあった標語は、「ゴミと命は持ち帰り」。ふーん。物騒な場所だったんだ。西岳の案内図に描かれた上級者コースはどう見てもロッククライミング。藪歩きする時はできるだけ安全なコースを選ぶのが定石で、わざわざ危険を冒す発想は無い。西岳の垂直な岩壁の絵を見て"一般コース″で登ることを即決。今市の月山にあった表示にもムカついた記憶があるが、定義不明の"上級者"の文字が気に入らん。"上級者コース"はすなわち"危険度の高いコース″または"おバカコース"である。案内図の西岳登山についての心得がさらに笑える。「軽い装備の登山は危険です。」 ← じゃあ、どんな装備なら安全なのか具体的に御教授願いたいね。「数か所特に危険と思われる所があります。慎重に行動して下さい。」 ← "思われる"という表現は無責任且つ曖昧。後日調べた情報に拠ると上級者コースでは過去に何名かの一般ハイカーが滑落死しているではないか。どんな登山者が訪れるかわからないのだから、"危険と思われる場所″を図解して、「それでも行きたければあくまで自己責任で!」と書くのが正しい。

地形図には東岳に登る破線路が描かれていない。急峻で登れないのであろうと推測していたのだが、股峠から東岳に向かう踏み跡がある。東岳に関して特に注意を喚起する説明が無いので楽に登れるのだろうと思い、まず東岳に向かった。数分登ったところで危険個所に至った。岩壁にポツンとボルトで固定されたステップがとっても不気味。せり出す岩を鎖に頼ってかわして上方に抜けるのに際し、ステップに全荷重を委ねなければならない(ドリルで岩に穿った穴にボルトを打ち付けることでボルト先端が奥で広がって抜け難くなる。よって、ドリル穴径とボルト径の関係が適正ならば抜けることはまず無い。理屈では理解していてもね・・・。)。このステップを設ける以前は普通の装備で同じコースで登ることはできなかったはず。地形図に破線が記されていないのも当然。アホなコース開設したものだな。

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岩壁のステップ


小生、しょっちゅう無謀なことをしているように思われているかもしれないが、何事も失敗する確率と失敗した時のダメージ(軽い怪我で済むのか、それともあの世逝きか)の積で判断して行動している。アルピニストや沢屋のようにスリルや困難さを克服することを目的に山登りをしたことは一度も無い。体が震えるほどの恐怖を感じた経験は誤って棒ノ嶺のバリルート登ったときくらいだ。生きた樹の幹や根ならば素手の感触でほぼ100%安全かどうか判断できるが、誰が設置したのか不明の安全証明の無い人工物に命を託す気にはなれない。鎖場が特に嫌いで、石裂山や奥久慈男体山なんて二度と行かないし、鋸山十二連峰も怖いので行ったことがない。妙義山なんて論外だ。丹沢のトラバース道や朝日岳の鎖場ですら怖いと思う。股間がムズムズしっぱなし。

ステップの下が垂直に切れ落ちているのが嫌らしい(地上5階のマンションのベランダから鎖につかまって1m先の壁のステップに足を伸ばすおバカ行為をしているのと変らないと思う。普段の生活の場でやると問題視される行為が登山コースだと何故か不問とされる。)。足を踏み外したら首がもげるか脳みそをぶちまけることになりそう。この場に関する予備知識が無いし現地に案内が一切無いので、来てはいけない場所に来てしまったのではないかという気がしてきた。棒ノ嶺の恐怖体験の記憶が蘇る。登りはよいとしても、帰りに後ろ向きにステップに足を載せることを想像するとぞっとする。そもそも今日はお気楽な山歩きを期待してきたのだ。あっさり退却決定。

戻る途中で展望の良い岩場に立ち寄り。テレビで見たマダガスカルのツィンギーには遠く及ばないが、雨水に浸食された石灰岩のエッジが鋭い。

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東岳途中の岩場から西岳を仰ぎ見る


西岳の急峻さは想像をはるかに超えていた。上級者コースなど論外だ。

西岳一般コースは岩壁に沿って右に回り込む。垂直な岩壁にクライマーが打ち込んだハンガーボルトが幾つか見える。

一般コースの割にやけに怖ろしいなと思っていたらコースから外れていた。ただし、コース上も決して安全とは言い難く、一般コースで事故が発生したこともある。東岳ほど嫌らしくはないが鎖場在り。

稜線に上がった場所から東端に向けて右回りと左回りの道がある(ように見えた)。右回りは南側の絶壁の上にあって足を踏み外す可能性大。当然行かない。風がやや強くて、座り込んでいても怖い。左回りの方が切れ落ちていないぶん安心感が得られる。

西岳から東岳方面を望む(逆光)

俺はあの半分も登らずに退却したってことね。

西岳東端から見る西岳山頂方面


西岳山頂に行く途中にも鎖場在り。この山ホント嫌い。爽快感無し。

西岳山頂
西岳山頂から西側の眺め


地形図では破線路が稜線上を西に向かう。しかし、西に連なる岩稜を見てうんざり。西岳山頂に縦走路に関する案内は皆無であり、予備知識ゼロのため本当に縦走可能かどうか判らない。危険で辿れないから案内が無いのかもしれない。震度5の地震でも起きたらさぞ生きた心地がしないだろう。万が一行き詰ったら悲惨だ。安全第一で退却決定(後日見た他者の記録によると、普通のハイカーでも西端まで縦走可能なようだ。知っていたら行っちゃったかもね。)。

股峠に戻る際、峠からハイカーの熊避け鈴の音と話し声が聞こえてきた。彼らは東岳に向かったようだ。しばらく峠で休憩するうちに鈴の音も話し声も聞こえなくなった。へっ?あの鎖場越えて行っちゃったの?この山は危険本能が欠如しているか、もしくは壊れたハイカーしか来ないみたいだな。俺とは人種が違う。

西岳南側の岩壁下を通って志賀坂峠方面に行けそうなので、ローソク岩方面に向かった。岩壁下の祠を経由してローソク岩下で支線に入ってローソク岩に近づく。ローソク岩は至近距離で見るとただの大きな岩で行く価値無し(遠くから見るとそれらしく見える。)。ローソク岩の先は道が不明瞭。岩壁下を適当に西に向かうと徐々に傾斜がきつくなる。適当に斜面を下ってトラバース道に復帰。

ジグザグに下っていく道と西進する道の分岐に至った。案内は無い。西進すると秩父鉱業が設置した立ち入り禁止の表示在り。道は上方の岩山に向かう。志賀坂峠が立ち入り禁止であるはずはなく、進行方向が予定と違うような気がしたが、地形図確認せず鎖につかまってステップ踏んで岩山に登ってしまった。東岳のような険悪さはないけれども、下り戻ることを考えるとちと気が重い(東岳のステップに言及せず西端の鎖場だけ記述している記録もある。人によって感じ方は様々ですな。個人的には古賀志山東稜コースと同程度に感じた。)。登った場所は二子山縦走路の西端らしい(さらに上に(東に)行くには岩壁に設置されたハンガーボルトを利用する必要がありそうに見えたのだが、他者の記録を見ると何の苦も無く縦走しているようだ。???)。志賀坂方面に向かう尾根の位置を確認して下山。

志賀坂峠方面(西岳西峰直下から)
叶山(西岳西峰直下から)


植林地のジグザグ道を下って開けた伐採・植林地の上部に抜けた(明るくて眺めが良く安心感が得られる場所であるためか、他者の記録でもこの場所の記述が見られる。)。

伐採地にて(標高1,020m)
消えゆく叶山


本当は尾根伝いに叶山に行ってみたかったのだが、確実に立入禁止であろうから止めた。二子山並みの絶壁を持つ様子を見ることができたので満足だ。武甲山の北面に似ている。

登山道は若い植林地の山肌を坂本方面に向けて下っていく。志賀坂峠方面に向かう破線路は現存しない。大部分藪化してしまっている。鉄塔から先はしばらく巡視路を利用できる。

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安曇幹線1号線123号鉄塔から見た二子山


廃道というほどではないが最近車が走った形跡の無い未舗装林道(地形図に記載無し。)と出会い、その先には踏み跡が無い。志賀坂峠まで尾根伝いにお気楽に歩けると思っていたため、ザックから地形図コピーを取り出すのが面倒で此処に至るまで地形図を全く確認しなかった。進行方向に赤久縄山が見えるので、このまま尾根を下ると神流川流域に降りてしまいそうだ。現在位置が不明であるため、正体不明の林道を東側に辿った。

林道は山襞に沿ってターンしながらゆっくり下って、地形図に記載されている現役の林道(二子山林道)に抜けた。つまり志賀坂峠に向かう県境尾根から外れてしまったわけだ。現役の道標らしきものを見た記憶がないので、錆びついて読めなくなった金属製道標があった場所で進路を確認すべきであったと思われる。志賀坂峠に行って時間があれば諏訪山にも行ってみたいと思っていたのだが、まあいいか。国道299号線の志賀坂トンネルを埼玉側に抜けた。

志賀坂峠から下る道には気付かなかったが、県境尾根道から坂本に下る道の入口は明瞭である。沿道に咲く黄金色のアワコガネギクがきれいだ。珍しい豆柿の木もあった。

二子山登山道入り口のある林道に入る手前で民家の二階にいるチビバカ犬に吠えられて気分悪し。登山道入り口には中型のバスが1台、自車を止めた駐車スペースにも10台程度の車有り。二子山は登山道がお粗末な割に結構メジャーな山らしい。

帰りは志賀坂トンネル手前から林道に入り八丁隧道を抜けて国道140号経由で戻った。林道沿いのカエデ類の紅葉が見事であった。山肌側にあるカエデの木は明らかに植栽されたもの。路肩下に生えている紅葉したカエデの木もおそらくは植栽されたものであろう。植栽されたものであったとしても陽光に映える紅葉は美しい。道路の建設に何の意味があるのかはさておき、この道路を計画した人はセンスが良いですな。

諏訪山直下・八丁隧道に向かう林道沿いの紅葉
 
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両神山方面


八丁隧道手前の広い駐車場に登山者の車が多数有り。二子山から眺める両神山の稜線は険相である。Web 上の情報に拠ると、自分が最も敬遠する鎖場だらけの山だそうな。すくなくとも八丁峠側から行くことはないだろうな。

小倉川流域にはニッチン(日窒)鉱山があって、今も細々と操業している。何か所か道脇にキラキラ輝く白い結晶質石灰岩の砕石の山を見る。廃鉱マニアには有名な場所であるらしい。この険しい峡谷に最盛期には2000人も住んでいたとはね。

台風通過翌日であったため、沿線には名を知らぬ見事な滝が幾つも出現。

小倉沢(たぶんね)右岸支流の滝
神流川(たぶんね)左岸支流の滝


山野・史跡探訪の備忘録