奥武蔵ハイキングその20(和銅黒谷駅 〜 蓑山 〜 井戸はぐれ 〜 釜伏山 〜 寄居町・東秩父村境界尾根 〜 小川町駅)

年月日: 2015年11月22日(日)

行程: 秩父鉄道・和銅黒谷駅(07:41)〜和銅遺跡見物〜簑山(美の山)(9:05-9:15)〜萬福寺通過〜井戸はぐれ(長瀞トンネル)近くから尾根取付き(10:47)〜310m小ピークで休憩(11:00)〜418.0m三角点(11:27)〜荻根パワースポットの北側で舗装車道に抜ける(11:47)〜釜伏山・釜山神社奥の院(12:10)〜釜伏峠〜657.7三角点(13:05)〜標高405mで舗装車道に抜ける(13:50)〜大宝地区〜東秩父村役場で休憩(15:00)〜東武東上線・小川町駅(16:45)

3連休で晴れるのは初日の土曜日のみ。今週は週末の体調が整っているので久しぶりに土曜日に山歩きしようかと思った。しかし、気温が高めの予報を聞いて気が変わった。日曜は一日中曇りだが気温が低めらしい。きっと人出も少なくて静かだろう。今年も奥武蔵の静かな場所で残り紅葉を愛でることにしよう。広葉樹の多い未知の尾根をつなげて奥武蔵を西から東に貫いてみる。そのついでに和銅遺跡にも訪問したい。土曜夜にようやく行程が定まった。秩父に向かうのは2年振りである。

武蔵野線・武蔵浦和駅05:28分発に乗車。新秋津駅と飯能駅の乗り換えも2年振り。順調に西武線秩父駅に到着。仲見世を通って秩父鉄道の御花畑駅に向かう。三峰駅方面に向かう列車の乗り継ぎに余裕が無いらしく、奥秩父方面に向かうハイカーは皆猛ダッシュ。自分が御花畑駅で切符を買う間に三峰駅行きが発車。

反対方向の羽生駅行きに乗って和銅黒谷駅で下車。和同開珎がお出迎え。降りたのは自分一人。他に誰もいないのがなんとも心地よい。

秩父鉄道・和銅黒谷駅
秩父鉄道・和銅黒谷駅


駅前に案内板が在った。ふむふむ。これなら簡単に行けそうだと思ったのだが、国道140号を渡ってから迷走。住宅地に入ると案内が乏しくてどちらに進めば良いのかさっぱり判らない。誤りに気付いて戻る途中で、先にすれ違った散歩中の男性に声をかけられた。「何か探してんの?」。まあ、不審者と思われてしまった訳だが、「この辺りに鉱山跡があるらしいんですけど。」と言うと、とても判りやすく道を教えて下さった。まさか目の前の山の裏手にあるとは思わなんだ。

こんなどんよりした天気の日でも朝から遺跡見物に訪れる子供連れの若い家族が居てご挨拶。思ったより人気ありますな。

露天掘り跡前のモニュメント
露天掘り跡前のモニュメント


和銅遺跡説明板@
和銅遺跡説明板@
和銅遺跡説明板A
和銅遺跡説明板A
和銅遺跡説明板B
和銅遺跡説明板B
和銅遺跡説明板C
和銅遺跡説明板C


沢対岸の露天掘り跡は不明瞭。遊歩道を登っていけば露天掘り跡が見られるという情報を得て登らずに去る訳にいくまい。体がなまっていて遊歩道をちょっと登っただけでつらく感じて、今日は十分に体を動かしたということにして帰ろうかと思った。遊歩道は中腹の断層に沿った露天掘り跡で行き止まり。確かに、ここまで登ると採掘したという感じが伝わってくる。

断層に沿った露天掘り跡
断層に沿った露天掘り跡


何故か鉱山跡に来るとご機嫌になる。パワーをもらって簑山(美の山)の遊歩道に入った。気温は低めだが無風で発汗。基本的に雑木林の中を登っていくが、鮮やかな紅葉は見られない。晩秋の静かな雰囲気のみ楽しむ。

どんよりとした天気の為か、美の山公園に人影無し。簑山は独立峰であるため、美の山展望台に上がれば360度見渡すことができる。西側の山並みは一切見えなかったが、奥秩父の山並みを眺めるのにここに優る場所はあるまい。

美の山展望台
美の山展望台


駐車場方面からコツコツと人が歩いてくる音が聞こえた。コートを羽織った女性が一人で歩いてくる。誰もいないと思った展望台にオヤジがいたらギクッとするだろうから、先に展望台を降りてベンチで秩父高原牧場方面を眺めながら軽食休憩。

予定通り関東ふれあいの道に入った。美の山は良く整備されている。

美の山、季節外れのヤマツツジ
季節外れのヤマツツジ


車が走れる幅を持つ歩道は山頂側から標高500m辺りまで延伸されており、途中から山道に移行する。この辺りからポツポツと親鼻駅方面から上ってくるハイカーと遇うようになった。年代はさまざまで男女のペアが多い。団体様も一組。車で簡単に上がれてしまう山だが、麓から登れば標高差400m強で、親鼻駅側から登る関東ふれあいの道は雑木林が多くてそこそこ距離も長い。秀逸なハイキングコースであると思う。

先が長いので萬福寺には立ち寄らず通過。国道140号沿いに歩いて皆野寄居有料道路の皆野長瀞ICに向かう県道に入る。ここから先の県道は荒川散策の一環で歩いたことがある。どんよりとした天気でも行楽客の交通量が多く、寄居方面から来た車が交差点から長い列を作っていた。

三沢川を渡って長瀞トンネルに向かう。長瀞トンネルを迂回する遊歩道から長瀞トンネルが貫く尾根末端に取りつくつもり。遊歩道南側の尾根突端はやや急峻なのでパス。遊歩道北側の尾根突端も、かつて井戸はぐれ(破崩)と呼ばれた難所である。その中間にある取りつきやすそうな尾根に薄い踏み跡に沿って進入(この場所を表す適切な表現がみつからないので、この記録上は井戸はぐれと表記する。)。

薄い踏み跡は尾根右側の谷を少し進んで消える。そこから尾根に上がる際、一つだけ目印があった。落葉広葉樹の穏やかな尾根で晩秋の雰囲気よし。稜線上に整備された道はないが、藪も危険な岩場もなく辿りやすい。太い樹木はなく大木の切り株が残るので、かつて皆伐されたことがあるようだ。標高310mで長瀞町と皆野町の境界に至る。

結晶片岩露頭
井戸はぐれから続く尾根上の結晶片岩露頭


標高300mを超えると進行方向左側の谷が手入れ状態のよくないヒノキ植林となる。岩の露出するやや急峻な場所を這い上がって標高380m超で左側から上がってくる尾根を合わせる。少し下り気味に境界尾根を進むと長瀞町側から植林斜面を上がってくる山道と出合った。標高390mの辺りに分岐があり、一方は峠を皆野町側に下る。道が下っていく皆野町側の谷は雑木林で、何故か実をつけた柿の木が一本混じる。昔の交易路のひとつと思われ、今も辿ることは可能であるように見える。

もう一方の分岐は418.0m三角点ピークの北側斜面を巻いて現役の林道に接続する。一旦山道と別れて稜線を進み418.0m三角点到着。ここの三角点標柱はコンクリート製の蓋の下に埋設されている。

418.0m三角点ピーク北西・標高390mの峠
418.0m三角点ピーク北西・標高390mの峠
418.0m三角点ピーク
418.0m三角点ピーク


男女の声が聞こえた。こんな天気の日にこんなマイナーな場所にハイカーがいるのか?東側に下っていくと、林道終点で山チャリ集団が休憩していた。釜伏峠方面から遊歩道を下ってきたのであろう。

林道終点からの破線路はよく整備された遊歩道である。ほとんど植林地帯で見どころは特にないが、一か所伐採地があって天気が好ければそこそこ眺めがよいはず。空中の水蒸気量が増して近場の眺めすらもんやりとしている。

意味不明の荻根パワースポットの北側で舗装車道に抜ける。未訪の釜伏山が見える。今日一日は天気が持つ予報であったのに、今にも雨が降り出しそう。霧雨というほどでもないが、すでに路面がしっとりと濡れている。釜伏山の訪問は今回の山歩きの目的の一つ。とりあえず釜伏山を目指す。

この辺りの落葉樹林の残り紅葉がとても美しい。釜山神社分岐から可愛い小さな女の子とお父さんが下ってきた。

釜伏山
釜伏山
釜伏山付近の残り紅葉
残り紅葉


釜伏山に行くには一旦下らなければならない。東屋のある鞍部まで東側(進行方向右側)に広い道跡のようなくぼみがある。地形図上で現役の車道のように描かれている道の実態は、落ち葉が厚く積もった抉れた幅の広い廃道なのであった。

釜伏山から小さい犬を連れた女性2人が降りてきた。この日山中で遇ったのは彼女らが最後。

現地の説明板に拠ると、釜伏山がぴょこんと飛び出ている理由は、山体が蛇紋岩から成り、周囲の結晶片岩よりも浸食を受けにくいからだそうである。登山路は岩ゴツゴツ。

天気悪くて何も見えねぇ。

奥の院の祠の彫り物が立派(このページの記事を拝見して、建立年代が読み取れなかった理由が判明。http://www5f.biglobe.ne.jp/~sy-baba/zakkann40.htm

釜伏山奥の院の狛狼
秩父の神社の楽しみといえば狛狼。狼というよりめんこいワン公だな。


釜山神社の参道を抜けて釜伏峠到着。釜伏峠は美しい紅葉が魅力。過去3度の訪問時はいずれも時期を逃した。今回は青空こそ望めなかったものの一番良い時期に来れたようだ。

釜伏峠のイロハモミジ
釜伏峠のイロハモミジ


この先の行程を思案。釜伏山滞在時に比べると天候が持ち直したように感じるが、あいかわらず空が暗い。この先、道なき尾根歩きとなるし駅までの行程が長い。安全策をとって寄居町に下ろうと思った。その前にひとつだけ確かめたいことがあって寄り道。2011年に見たヤマナシの大木の様子を確かめたかった。峠から廃業した登谷牧場に向かう、現在使われていない道に入った。昨年は実をつけず枯れてしまったのかと思われたヤマナシの木は健在であった。2011年時ほどではないが小さな梨の実をたくさんつけていた。数個採取。石細胞とよばれるガリガリした部分の食感が好きである。

ここから引き返すつもりでいたのだが、広葉樹林の稜線に藪はなく登っていくのは容易に思えた。しかも現役のものではないが道跡が存在する。気が変わって当初の予定続行。

道跡は皆野町・寄居町・東秩父村の3町村境界ピークの北側を巻いて標高620mの辺りから寄居町・東秩父村境界尾根を下っていく。この道はかつて大宝から釜伏峠に抜ける道として用いられていたのではなかろうか。ひとまず、三方境界ピークを経て、登谷牧場の有刺鉄線沿いに登谷山北方の657.7m三角点まで往復。

オトコヨウゾメ
オトコヨウゾメ
657.7三角点
657.7三角点


寄居町・東秩父村境界尾根はすっきりとした落葉広葉樹の尾根であり、目印の類は皆無。奥武蔵にこんな手つかずの場所があるなんて嬉しい。

標高580mのやや急な場所を下っているとき、猟犬の吠え声が聞こえた。追い込み猟をしているらしい。物音たてると猟犬が近づいてきそうだし、ハンターがどこで銃を構えているかわからないのでしばらく座ってじっとしていた。一時は猟犬のつけた鈴の音が聞こえるくらい接近。吠え声が十分離れてから尾根下りを再開。遠くでダーンという発砲音が響いた。怖ぇ。足音が響かないように尾根反対側に少し下った場所を進んだ。

高度計を持ってこなかったけれども548m ポイントの屈曲点で迷うことはなかった。

尾根南側に人家が見えた。飼い犬がいたら面倒なことになる。北側の植林斜面を進んで標高405mで舗装林道に抜けた。

林道ゲート
標高405mで舗装路に抜ける


この先、車道歩きは距離が長くてつらい。幸いなことに、ゲートを抜けて程なく近道できそうな道跡を発見。尾根上の道の続きらしい。うまい具合に大宝集落の直上に出ることができた。

大宝地区は、柑橘類が栽培されている美しい山里である。集落内の通路を適当に下って舗装路歩きを短縮。

大宝地区
大宝地区


地形図見て行程検討した時点ではさらに尾根歩きが可能であるように思えたのだが、時間的余裕は無い。県道294号に出てからは延々と車道歩き。大内沢川→槻川沿いの雰囲気がよくて退屈することはないのだが、休憩するに適した場所が無い。結局、東秩父村役場まで歩き通して、役場前の縁石に座って軽食休憩。「細川紙」がユネスコ無形文化遺産に登録されたのがきっかけなのか、わしのちゃんなるゆるキャラの表示があった。

脚の疲労感が著しい。歩くうちに何度か小川町駅行きのバスに抜かれた。ここまで来てバスに頼るのは癪であるので意地になって歩き通した。ひたすら足を前に出すだけで風景を楽しむ余裕無し。最後はすこしつらかったものの、9月に傷めた脚の状態の回復具合を確認できたという意味ではよかったかな。

山野・史跡探訪の備忘録