岩井駅〜富山〜伊予ヶ岳〜津辺野山〜秋葉山〜安房勝山駅(2016年1月)

年月日: 2016年1月10日(日)

行程: 岩井駅(08:32)〜富山北峰西尾根末端(09:01)〜富山北峰(10:15)〜富山南峰(10:30)〜伊予ヶ岳六地蔵登山口(11:42)〜伊予ヶ岳(12:10)〜林道に抜ける(12:35)〜(林道嶺岡中央三号線)〜津辺野山(14:27)〜秋葉山(14:43)〜安房勝山駅(15:45)

1月10日は青春18切符の有効期限日。今年は最終日が休日で、しかも天気が良い。昨年末に続いて青春18切符利用で南房総にハイキングに出かけた。

昨年末に鷹取山から富山(読みは「とみさん」らしいのだが、湯桶読みだし、春日八郎の歌名みたいで違和感がある。そのためか、近くの館山自動車道・鋸南富山インターの読みは「とみやま」である。)と伊予ヶ岳を見て興味が湧いた。今回も予備知識ゼロで地形図だけ見てコースを検討。近くの津辺野山にも寄りたい。津辺野山には破線路が記載されていないし、西側(安房勝山駅に近い側)末端は採石のために削られているようなので、おそらくは東側の緩いバカ尾根を林道から往復することになりそうだ。よって、岩井駅から出発して伊予ヶ岳から林道歩いて戻ってくる途上で津辺野山に立ち寄るコース設定とした。

地形図を見ると富山北峰の長い西尾根が気になる。末端から破線路が記載されているのだが、何故か途中で尾根から降りてしまう。尾根の途中に危険個所が存在する可能性があるため、当初は安全策をとって南峰に上るつもりであった。岩井駅側から富山方面に向かう際に西尾根を見る限りでは、細かなアップダウンはあるが険しい場所は無さそう。館山自動車道を過ぎると、進行方向左側に『伏姫籠穴』なるものの案内が在った。南総里見八犬伝縁の場所であるという。里見八犬伝なんて獣姦のイメージしかないのだけれども、伏姫籠穴が西尾根末端と同じ方向にあるもので興味が湧き、予定変更。伏姫籠穴に立ち寄り、ついでに西尾根を試してみる。

富山中学校に近づいてみると、伏姫籠穴を指し示す道標は尾根末端とは逆の谷奥方向を向いていた。伏姫籠穴をあきらめて尾根末端に向かう。尾根末端から続く遊歩道入口にも伏姫籠穴の案内があり、これを素直に信じる限り、伏姫籠穴は尾根上のどこかに在るように思えてしまう。実は尾根上にはなく、尾根の途中から谷に下っても行けるという意味らしい。

尾根コースは南房総市が遊歩道として土止め階段を設置している。高さが合わずにハードルみたいになっている場所あり。あまり踏まれた様子はないが、秋にコース上の藪を刈り払ってあるため歩きやすい。北側の眺めの良い場所があって、訪問予定の津辺野山が見える。現在地との間にある検儀谷(けぎや)地区が現在地より標高があるため、この時点ではまだ津辺野山の下部の様子が見えない。

画像
津辺野山


稜線が痩せており鬱蒼とした感じはない。東北や北関東の山しか知らない者にとっては植生が新鮮。ビワやトキワマンサクの自生を初めて見た。ヤマブキがたくさん生えているので春先はきれいだろう。

遊歩道脇の植物(シダ類?)
       


遊歩道は地形図の破線路の通りに尾根から下ってしまうが、稜線上には踏み跡が続く。立ち入り禁止の表示はないのでそのまま稜線を辿る。傾斜のきつい場所には決まってロープが設置されており、管理状態にある。稜線幅が1mにも満たないような場所もあるが、岩場ではないためさほど危険は感じない。

確か285mポイントの前後だったと思うのだが、七夕飾りに用いられる直径2、3センチの竹がびっしり生えている場所があった。尾根筋の竹藪なんてのも初めての経験。

竹藪
290mポイントは眺め良し。
富山(北峰は隠れて見えない。逆光気味。)


北峰の広場は日光の半月山駐車場の南側末端同様、段差があって楽に上がれない。たてかけてある鉄パイプと樹木を利用して這い上がり、柵を飛び越えた。たまたま先客は展望台の上で景色を眺めていたため、誰にも目撃されずに済んだ。その直後に南峰側から続々とハイカーがご到着。

富山西峰展望台から見る富士山
鋸山方面
岩井海岸方面


山頂で写真撮影している男女がいたので、三角点はパス。林道が上がってくる鞍部まで幅広の歩道が続く。遊歩道としては無用の広さだ。1999年に皇太子ご夫妻が散策されたそうなので、その際に自治体が余計な気遣いをしたのかもしれない。

展望台が整備されている北峰に対して、南峰は眺望が無い。地デジアンテナらしき施設がある割には、観音堂や祠の廃な印象が強い。

画像
観音堂


鞍部から杉が植林された東斜面の林道を下る。コウヤマキの剪定屑が大量に捨てられていた。犯人が麓の農家であることはモロバレ。農地がコウヤマキの生垣で仕切られている(房総半島ではコウヤマキに良く似たイヌマキが生垣に用いられているとのこと。自分が見たのはイヌマキの可能性が高い。)。

暖かい地方は植林地内の植生も面白い。関東北部で冬場に山歩きして見かけるシダ類なんてオオバノイノモトソウくらいのものだが、こちらは何種類ものシダが青々としている。シダ類以外で目に付いたのがコレ。

ハナミョウガ
       


食材にするミョウガの花(花ミョウガ)ではないよん。葉を潰して嗅いだ匂いはミョウガというよりショウガに近い。見たのはこれが初めてだが、暖地では樹下でよく見られる植物であるそうだ。食べられるのかどうか判らない。ウェブ検索するとゴミ(花ミョウガ)ばかりヒットする。

この林道も富山のハイキングコース扱いになっていて、自由に使えるハイカー用の杖(竹)が備えられている。途中に駐車場らしきものは皆無だが、だいぶ離れている伊予ヶ岳を指し示す標があるので、両者を併せて登る人は少なからずいると思われる。事実、林道を下る途上で2名の単独行の男性と遇った。

画像
伊予ヶ岳遠望


富山を下りてからすんなりと伊予ヶ岳に向かう道は存在しない。案内に忠実に従ってだいぶ長いこと舗装道路を歩かされる。おまけに、水車小屋近くの道標には伊予ヶ岳の標示が無い???。目的地は見えているので、車道を歩いて確実に接近。

伊予ヶ岳は近くで見るとなかなかの威容だ。

伊予ヶ岳山頂の岩場(車道から)
伊予ヶ岳(六地蔵登山口)


登山道の踏まれ様から察するに、六地蔵登山口を利用するのは富山とセットで歩く人がほとんどかもしれない。下ってきたのは男性の単独行者2名のみ。

天神郷登山口からの道と出合って以降は急に騒々しくなる。この手の山(例えば奥武蔵の伊豆ヶ岳)はハイカーが群がる傾向があるので嫌な予感はしていたのだが、案の定、伊予ヶ岳は人気の山であった。特に休憩所から山頂までのロープが設置されている区間はやっとこさ登り下りするハイカーで渋滞。登りでロープは必要ないのでさっさと先行者をかわして山頂へ。運良く誰もいなかった。

伊予ヶ岳山頂
富山と津辺野山(伊予ヶ岳から)


後続者が来る前に北峰に移動。狭い山頂で家族連れが飯を作っていた。人気の山を独占しようとする気持ちが判らないな。というより、弁当持参して広々とした場所で昼食休憩するのが自分のピクニックのイメージなので、入れ代わり立ち代わり大勢の人が来る場所で平気で飯食える感覚が理解できない。

画像
伊予ヶ岳山頂(北峰から)


北峰の急な西斜面にも踏み跡がある。バリを楽しむ物好きがいるらしい。そして北峰の北側にも稜線上に踏み跡が続いていた。よっしゃ!これであの渋滞区間を通らずに林道に抜けられそうだ。

ところが、稜線上の踏み跡は尾根筋に忠実に下っていく。これもバリルートの一つらしい。少し戻って東側植林斜面に下っていく踏み跡を辿ってみたのだが、途中で不鮮明となる。このまま斜面を下ると谷に下りてしまい、対面に見える林道に素直に入れない。倒木だらけで土壌の緩い植林斜面をトラバースして林道に抜ける登山道に合流。

ほぼ全てのハイカーが天神郷登山口から往復するようだが、あの岩場を登り下りさせる必要があるのだろうか。山頂の景色を楽しむだけなら、北峰経由で山頂(南峰)に向かうコースが整備されてもよさそうなものだが。ま、スリルを味わいたくて登っているというのであれば、要らん提案だけどね。

林道を歩いて喧噪から解放された。

画像


この未舗装林道は全線舗装された幅広の林道嶺岡中央三号線に接続する。ゲートの類はなさそうであるが、交通量は極めて少ない。この辺りは地形図気にせずのんびり歩いていたもので、等間隔で接続する何本かの破線路の存在には気づかず。

213.6mピーク北を通り過ぎて緩く下っていくと左側にテーブルとベンチがしつらえられている。道祖神があって、溜池に向かって下っていく歩道あり。反対側にも道があるので昔の峠道であるようだ。早めに林道を下って岩井駅に戻るならここから二部地区に抜けるという選択肢もある。

画像


これ以降は耕作放棄地なのか、道路下の斜面にスイセンが咲き乱れていた。

北から林道が接続する津辺野山東尾根末端には登り口らしきものは見当たらない。林道嶺岡中央三号線を少し進むと尾根上に続く薄い踏み跡を発見。ここ以外に取り付けそうな場所が見当たらなかったので進入(もう少し西に進めば入口があるらしい。)。尾根上に上がって以降はうるさいくらいに赤テープがついている。バカ尾根なのでテープが無くても迷うことはないと思う。

尾根は自然林で藪なし。山頂に近づくとジャングルっぽい雰囲気となる。

山頂東側の雰囲気
津辺野山山頂


汚い山頂である。祠の類も無い。津辺野山に来る価値があるとは思えない。

山頂から先、別の場所からの明瞭な登路があるのではないかと期待していた。期待していたものとは程遠いがうっすらとした踏み跡が西に続いており、相変わらず赤テープが付いている。ならば尾根筋に沿って移動するまで。踏み跡は鞍部を通り過ぎてさらに先に向かう。本日最後の登りを終えて至った緩やかなピークには秋葉山なる名があった。秋葉ってことはどこかに防火の神様が祀られているってことかな(ウェブ上で得られる秋葉山に関する情報では、北側麓の秋葉神社が登り口であるとのこと。)。

道路跡らしきものが見当たらないのになぜか古いボロボロの車が一台棄てられている。

明るい方向に向かうと、そこは古い採石場跡地の縁であった。自分好みの眺めだ。おそらく遺棄車はかつて林道があった頃に運ばれてきたものであろう。その林道は採石によって失われてしまったようだ。

秋葉山の遺棄車
秋葉山採石場と安房勝山方面


赤布が案内する踏み跡は採石場の縁の林の中を下っていく。採石場にはかならず上り下りする道が存在する。踏み跡を離れて採石場に再び接近してみると段差無くすんなりと入れた。立ち入り禁止の類の表示は一切ない。採石場跡地の茅野にも踏み跡があって辿れそうである。時間的に余裕があるので踏み跡を辿った。

近年に採石場跡を歩いた人がいるのかどうかわからない。全般的にススキが密生して方向を見定めにくい。蔓も混じって進みにくい場所もあるが、山上から見えていた平場までは勾配的に問題なく下れた。その下部は現役の採石場になっている。現役の道にすんなり抜けることができない。2m程度の段差を慎重に下りた。幸いなことに連休で採石場は稼働していない。関係者がいたらこっぴどく叱られそうな行為だが、山の上に何も標示がないのだからしょうがない。

画像
秋葉山を見上げた図


安房勝山駅ホームから見る、周りを削り取られたアイスの如き秋葉山の姿が面白い。

画像
安房勝山駅にて


帰宅後に得たウェブ上の情報では、秋葉山の登り口は採石場の東側にあるようだ。ただし、踏み跡が不鮮明な場所多し。この手の山に慣れない人は入らないのが無難と思う。

山野・史跡探訪の備忘録