勢至堂峠 〜 馬入峠(前半)

年月日: 2016年5月4日(水)

行程: 勢至堂トンネル湖南側入り口スタート(14:00)〜勢至堂峠(14:10)〜863mポイント(14:38)〜祠(14:52)〜994mピーク(15:29)〜小屋川の林道分岐(16:17)〜帰着(17:54)

昔から勢至堂峠から馬入峠に連なる尾根に興味があった。名前のついた山も三角点もなく、標高も1,000mに満たない。それでも、勢至堂峠側の約半分は分水嶺であり、会津の境界尾根でもある。均整のとれたピーク(不思議なことにほぼ同じ標高を持つ)が幾つか在り、猪苗代町で育った自分は毎日のように猪苗代湖の北側からモコモコと連なるこれらの山々を見ていた。

1年前に鬼面山に登った時に採石場跡から間近に分水嶺を見て興味が再燃し、一日で周回する可能性を検討してみた。峠から峠まで尾根を歩き通すことは容易として、帰りのルートが悩ましい。昨年見つけた廃道を利用して南回りで分水嶺を跨いで戻るのが最善と思うが、距離が長く行動時間は10時間を超えるだろう。連休にすっきりした天気が望めなさそうであるため、今年はこの地を探索することを半ばあきらめていた。

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鬼面山の採石場跡から見る(右から)勢至堂峠〜馬入峠の尾根
中央が994mピーク。背景は飯豊連峰、磐梯山、吾妻山連峰


5月4日(水)は当初雨の予報で山歩きの予定なし。午後から晴れるとのことで、急遽山歩きの可能性が復活し慌てて準備して実家を出発。行動時間はせいぜい4時間。勢至堂峠から中間地点の994mピークまで歩ける可能性がある。時間の関係上、994mピークから戻るのに南回りの周回案のルートは使えない。2006年に小屋川流域を探索した際、994mピーク北側中腹まで未舗装林道が延びていることを把握済み。この林道を利用して小屋川に沿って下り、途中から伐採斜面を登って尾根越えして戻るつもり。時間が遅くなって安全に山越えできそうにない場合は国道294号まで下って勢至堂トンネルまで戻ることにする。

勢至堂トンネルの湖南側口から太閤道を辿って勢至堂峠着。

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勢至堂峠


藩界表石の後ろに続く尾根に進入。概ねチマキザサの生える雑木林で歩き易い。藪中に現役のものではないうっすらとした窪みが続く。道跡らしき窪みは無駄なく勢至堂トンネルの直上にあたる鞍部を通り分水嶺上に続くが、863mポイントに向けてのチシマザサの生えるやや勾配のきつい斜面で追えなくなった。

863mポイントから真南に向かう幅広の尾根上は概ねチマキザサ藪で、ササの無いすっきりした場所が一か所だけ存在する。

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863mポイント南


勢至堂集落の谷の頭に相当する870m級ピークに緩やかに登り詰めると予期せぬものが在った。大正三年八月九日の建立。施主は不明。祠は勢至堂集落を向いているので、勢至堂集落の山の神的存在であったと思われる。

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870m級ピークの祠


昔の街道は勢至堂集落を通って谷奥へ進み、現在のトンネル入り口がある辺りで右俣の谷に向かう。2013年に谷の本流筋である左俣の入り口付近を探ったことがあるが、本流筋に現役の道はなかった。しかし、本流筋を緩やかに詰めると祠のあるピークの南側鞍部に容易に上がれそうである。事実、祠のあるピークから南の鞍部にかけて現在も誰か歩いている人がいるのではないかと思わしめるほど明瞭な道(獣道)が存在する。この祠は峠からではなく、南側鞍部から運び上げたものと推測する。

鞍部への下りは容易だが、鞍部から850m級ピークへの登りは一転してチシマザサの藪漕ぎとなる。850m級南の鞍部はチシマザサが深い。鞍部からは994mピークが聳え立つように見える。

鞍部から南の斜面の標高830m以上はアスナロ藪にびっしりと覆われていた。アスナロ藪にはまったら時間的に帰れなくなってしまう。分水嶺を忠実に追うことをあきらめてアスナロ藪よりも標高の低い斜面をトラバースして994mピーク南東鞍部を直接目指す。何本か浅い沢筋を渡り、獣道も利用しながら順調に標高830m級鞍部到着。

994mピーク南東斜面に明瞭な道はない。勾配がきついものの藪は薄く掴まるものもあって登りは容易。ギャーギャーわめきながら藪漕いで逃げていく動物がいた。この辺りにサルいたっけ?

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994mピークへの登り
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950m辺りで梢越しに鬼面山が望める。


頂上部はなだらかで藪薄い。この山は過去に人の手が入っており大木は存在しない。山頂部にポツンと残された太い木の根元に境界杭と太いワイヤーが在る。つい最近置かれたと思しきプラスチック製の黄色い杭が刺さっていた。

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994mピーク頂上


山頂から真北に下りるつもりであったが、山頂から高井原山に続く尾根筋の笹が刈り払われているのを見て気が変わった。誰が何の目的でわざわざ笹を刈ったのか確認したいし、これを追えば林道に楽に確実に出られそうに思えたからである。

標高950m以下になると尾根の北側が比較的若い植林地になっている。そして、標高930mで尾根筋から分かれて植林斜面を下る別の笹刈りの痕があった。分岐には黄色いテープが巻かれている。笹刈りの痕は真直ぐ下って横移動する繰り返しで、点々と山頂にあったものと同じ黄色い杭が残されている。いったい何が目的なのかさっぱり判らない。こんな山に登山道作るはずはないのだから、植林地ではない山頂まで笹刈りする必要はないのだ。

そのうち笹刈りの痕を追えなくなり、植林地からも外れてしまった。予定のコースよりも西側に引き込まれているはずなので、東側に斜めに藪を下っていくと下方に植林地と伐採地が見えてきた。予定の林道に出て安堵。これで明るいうちに帰れる。

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高井原山


林道を歩き始めてすぐ、下流側から軽トラックが一台ゆっくりと登ってきた。ゲートのある林道に車で入ってきたということは、地元の人がタラの芽探しにでもきたんだろう。

まだ山越えが控えているので時間が気になる。足早に林道を下った。舟沢洞穴に向かう旧道入り口に在った案内は朽ちて倒れていた。

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小屋川砂防堰堤にて


2008年に見た勢至堂トンネル近くの伐採地に至るような山道に出合うことなく林道ゲートまで来てしまった。ということはここから小屋川を渡る林道分岐の先に伐採地があるということか。ここまで来てしまったら国道294号歩いて戻った方が楽と思うが、伐採地がどうなっているのか確かめたい気持ちが優った。

期待通り伐採地には至ったものの、思ったほど楽ではないことが判明。山肌を刻む作業道を適当に辿って尾根上に出てみたが、尾根の反対側に国道294号が見えない。この辺りの地形図を持っていないため、自分の正確な居場所が判らん。眺めは悪くないけどねぇ。

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小屋川右岸の伐採地
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伐採地から見る猪苗代町方面(伊羅沢山、遠くに磐梯山と川桁山)


安全策をとって伐採地の北の端まで移動してから尾根東斜面を下った。下りた場所はなんと唐沢地区のすぐ傍。素直に道路歩いて戻ればよかった。

時間が気になって水一滴飲まず歩いてしまった。ちょっと食べ過ぎだったから昼食後の運動にはよかったかも。

山野・史跡探訪の備忘録