房総丘陵ハイキングその6(安房鴨川駅 〜 嶺岡浅間 〜 長狭街道・金束バス停)

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天狗の面の祠


年月日: 2016年12月18日(日)

行程: 武蔵浦和(04:58) - 武蔵野線 - (05:51)市川塩浜(05:56) - 京葉線 - (06:26)蘇我(06:36) - 外房線 - (07:19)上総一ノ宮(07:22)- (08:27)安房鴨川駅 〜 嶺岡トンネル 〜 嶺岡林道2号線 〜 パラグライダー練習場手前の未舗装林道を下る 〜 白滝山嶺岡浅間コース沿いにある天狗の面を祀る祠に立ち寄り(10:45 - 11:00) 〜 浅間神社(11:15 - 11:20) 〜  嶺岡林道2号線に復帰 〜 八丁経由で国道410号線 〜 長狭街道沿いに寄り道しながら適当に西進 〜 (13:55)金束バス亭(14:10) - 日東バス - (14:44)安房鴨川駅(14:53) - 外房線 - (16:40)蘇我(16:42) - (16:56)海浜幕張(17:05) - (18:04)武蔵浦和

年初の富山〜伊予ヶ岳〜津辺野山周回に関連して何かの画像検索をしていて、1枚の不思議な祠の写真に目が留まった。これは行って見ねばなるまい。房総半島の山歩きにお詳しいふうりんさんのブログで大体の位置を把握。南房総の山は全般的に植林の手入れの状態が悪くて竹を主とした藪が酷い。さらに、とんでもない場所に人家が点在しているため、うっかり私有地に入り込んでトラブルになる可能性大。よって、道無き場所には立ち入らないのが賢明。南房総の丘陵はたいていど真ん中を林道が貫いており、車で移動して個々の山を登るよりも林道を通しで歩く方が面白い。何の意義があるのかよく判らないのだが、太平洋と東京湾を繋ぐように南房総の丘陵の上に数本の舗装林道が建設されており、それぞれ嶺岡の名が冠されている。嶺岡とはどうやら長狭街道南側に東西に広がる丘陵地帯を指す呼称であるようだ。年初に伊予ヶ岳から津辺野山に移動するに際し林道嶺岡中央三号線を歩いた。どうせなら安房鴨川から安房勝山まで全部繋げて歩いてみようか。嶺岡林道を歩くついでに天狗の面の祠に立ち寄る計画をたてた。寄り道しても全長35km程度。外秩父七峰縦走コースよりも楽に達成できるはず。で、結果はというと、うまいこと近道しようとして誤って私有地に入り込んだのがきっかけで大きくコースを外れ、予定していたコースの半分弱しか歩くことできず。

18日の埼玉県及び千葉県北部は氷点下の冷え込み。沿線の田んぼの水たまりに氷が張っているのが見える。どんなに冷え込もうが電車は各駅で停車するたびに全てのドアを全開してしまうので寒くてたまらない。3時間以上かけて移動するうちに体が冷え切ってしまった。安房鴨川駅からテクテク歩いて嶺岡林道二号線に上がってようやく体が温まってきた。

嶺岡林道二号線は交通量少なく静かで快適。ときどき行き会う人は皆気持ちよく挨拶を返してくれる。

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林道からの眺め(太海方面)


林道沿いのイチョウは完全に葉を落としきっているというのに、その一方でバナナが実をつけている。この辺りではあたりまえの光景かもしらんが、普段の生活で目にすることがないので不思議な感じだ。


庭木のイメージがあるヤツデはこの辺りの藪中で最もポピュラーな樹木のひとつ。

自生のヤツデ
       


嶺岡は戦国時代の里見氏が軍馬用牧場として利用し、江戸時代には幕府の牧場として利用された場所であるとのこと。詳しい説明はないものの、沿道にそれらの場所を示す標がある。

路肩に『嶺岡七鈴鏡遺跡』なる標が建っている。説明は無く、「出土地は電柱番号370の所」と記されているのみ。何の変哲も無い場所で遺跡があったような雰囲気は無い。道路建設中にたまたま発見されたものであるとのこと(NPO法人 安房文化遺産フォーラムの頁参照。)。

天狗の面の祠に立ち寄るべく、一旦嶺岡林道を離れてジグザグの未舗装林道を下る。そこはパラグライダー滑空場になっていて、鴨川市の眺めがよろしい。想定外の良い眺めが得られて満足。

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パラグライダー滑空場から見る北側の眺め(天狗の面の祠は左手前の尾根上に在る)


一旦パラグライダー滑空場下まで下ってから峠に向けて上っていく。峠で交差するハイキングコースに入る。

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白滝山嶺岡浅間コース案内図


目的の祠はハイキングコースから直接見えないとのことなので、それらしき場所を意識しながら進む。ハイキングコースが狭い尾根の突端を回り込もうとする場所の上部にそれは在った。

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天狗の面の祠


真ん中の祠の右にある碑に拠れば、宝暦九年(1759年)七月の奉献とのこと。天狗の面を祀るということは火防の神様なのかもしれない。この祠を制作して祀ったのはどんな人物であったか。

祠で軽食休憩後、峠に復帰して浅間神社に向かう。この時期に最も目立つ紅葉はハゼノキである。先日浜離宮で見たハゼノキには及ばないものの外房線沿線の山肌に多数の朱色の斑点が目立つ。内陸に入るとカエデ類が好む場所ではまだイロハモミジの紅葉が残っており、今年最後の残り紅葉が楽しめる。

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未舗装林道峠とハイキングコースの交差点にて


浅間神社のご神体である石祠は高さが170cm位ある。これほど巨大な石祠を見たのは初めて。


嶺岡浅間の三角点(334.7m)はこのすぐ近くに在る。山名板が2つあって、SHCなんとかの山名板には360m、房州低名山の山名板は334.8mである。なんでどちらも違うのか?

雪国で生まれ育った人間にとって、アザミの花とスイセンの花が時を同じくして存在するイメージはない。年を隔てるべき存在である。暖かい地方ではあたりまえの光景なのだな。

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吹原から見る烏場山方面


次の目的地である愛宕山が良く見える。事前に何も調べてこなかったが、コピーしてきた地形図に拠れば山頂に航空自衛隊嶺岡山分屯基地があることになっている。薄緑色の大きな建物がその施設の一部か。おそらく一般者は立ち入りできないであろうから破線路で山頂を目指すわけにはいかない。しかし、全部舗装林道歩きというのもかったるい。八丁に下って国道410号線に抜け、破線路を辿って嶺岡林道一号線に近道しようと考えた。

八丁に下るまでは順調。すぐ近くの国道410号線を走る車の音が聞こえる。そして現在いる車道から国道410号線に連絡すると思しき車道に入った。これが運の尽き。車道を進んでいくと何だか様子がおかしい。私道のようだ。運悪く民家の主人が敷地内で作業中で、こちらに気付いている。このまま引き返したらただの不審者になっちまう。人様の敷地に入ってしまったからには挨拶せぬわけにはいくまい。こちらから「すいません。道間違えてしまって。国道に出たいんですけど中を通らせてもらえないでしょうか?」とお願いすると、「ああ、いいよ。こっち。こっち。」と快く応じてくれた。

ご主人 「どこ行くの。」

自分  「愛宕山に登ろうと思って。」

何故か愛宕山のことはそっちのけで、ご主人はこの変な野郎がどこから来てどこに行こうとしているのかに関心があったらしい。

ご主人 「どっから来たの。」

自分  「鴨川から山の上の林道を歩いてきました。」

ご主人 「で、どこまで行くの。」

自分  「東京湾の方に抜けて駅まで行こうと思って。」

ご主人 「ほう。JRの駅だろ。となると一番近いのは保田だな。保田に行くにはね。ここを右に行って・・・・。」

勝手に行く先を保田と決めつけたご主人は保田までの道順の説明をしてくれた。自分は左に行って愛宕山に登りたかったのだが、せっかく熱心に説明してくれたご主人に悪いような気がして、お礼を申し上げてお薦めに従うことに・・・。

国道410号線を北に下っていく間、愛宕山への登路がありそうな場所はない。どの辺りにいるのかはなんとなく判るが、所持していた地形図の範囲を逸脱してしまったので距離感がつかめない。長狭街道と愛宕山の間の田園地帯を適当に西進しようとするも、道路や地形の流れによって北の長狭街道まで押し戻されてしまう。これから愛宕山に登れたとしても時間的に厳しい。

嶺岡林道を歩く計画を放棄して車道歩きで保田を目指すことにしたのであるが、いまだに鴨川市を抜けていないし、「浜金谷まであと16q」なんて表示を見ると気が萎えてしまう。気力がなくなるとドドッと疲れを感じる。翌日の仕事を考えると早く帰宅したいという気持ちが勝り、歩きを中止して金束(こづか)バス停からバス利用で鴨川駅に戻った(\600)。

計画通りに行かなかったこと自体は不満だが、愛宕山周辺の里を歩いてみて幾つか面白い発見があった。次回、バス利用も絡めて愛宕山をどう面白く歩けるのか試してみる。

山野・史跡探訪の備忘録