天栄村・河内川遡行 (2017年10月)

年月日: 2017年10月10日(火)

河内橋・標高約715m出発(08:00)〜馬尾滝(08:48)〜右岸無名滝・標高約820m(09:40)〜折り返し点・標高880m(10:28)〜河内橋に帰着(13:10)


昨年秋から仕事に追われ続けた一年であったが、幸い今年も秋に少し余裕を生み出すことができた。秋に私的に4連続休暇を設定。自車を持たない身。連休にレンタカー利用で田舎に帰るついでに条件が合えば歩いてみたい候補地を幾つか選んでおいた。今回は天候が優れないことを考慮して、登山よりも沢歩きを選定。

天栄村の河内川には右岸支流の合流点に馬尾滝なる美麗な滝が懸かる。観瀑用の道は整備されていないが滝屋の間では有名な存在で、地形図にも名称が記載されている。河内川には昭和40年代まで森林軌道があったことも興味をそそる(下記資料を参照。)。

@ トロッコ道跡と馬尾滝

A 天栄・湯元 でどやま物語

前夜移動していつもの場所で車中泊。適温で、朝6時に防災無線の音楽が流れるまで5時間程度寝ることができた。前夜は栃木県から福島県にかけて粉糠雨もしくは小雨状態であったが、朝方は青空が覗いてヤル気が湧く。

河内川左岸沿いの道に進入するつもりが、誤って羽鳥高原に向かう道に入ってしまった。すぐに予定の道と違うことは気付いたものの、こちらからも河内川にアクセスできるはずであるので、地図を持たずにそのまま進行。しかし、それらしき道を見かけぬまま道の駅まで下ってしまった。引き返してグランディ羽鳥湖スキーリゾートに向かう道に入ることはできたものの、スキー場に至るまでに未舗装林道の分岐を一つ見たのみ。道路地図を持たぬもので、あれが河内川に向かう道であるという確証が無い。そもそもレンタカーで未舗装林道を走行することを想定していなかったので、こちらからアクセスする案を放棄。国道118号まで戻ってしまった。時間とエネルギーの無駄であったな。

当初の予定通り国道118号から河内川沿いの道を南進すると、二岐温泉に向かう道のみ舗装路で、河内川に向かう道は未舗装で退避点の少ない林道である。幸い荒れはなく普通自動車でも走行可。次の分岐で左(西部林道)に入り、予定よりも1時間遅れで河内橋到着。先客は無し。鳳坂峠から見た二岐山の上部は雲の中であった。雲の流れが速い。山上では横殴りの雨であろう。谷奥は曇っていて、奥は降雨していそうだ。河内川を詰めて山上に抜けるメリット無しと判断して、日帰りできりの良い場所まで往復する案に変更。懸垂下降の装備を持たずに荷を軽減。

右岸側の踏み跡は明瞭。日頃の運動不足に前々日の運動の疲れがあって歩みがノロい。踏み跡に落ちていたスギの枝に足を引っ掛けて転んだ。今日は無理はできんな。

程なく最初の渡渉点に至る。馬尾滝まで渡渉点以外に沢歩きの区間は無いと認識していたので、素足でフェルト底の沢靴を履いて渡ったのだが、沢水の冷たいこと。少なくとももう一回は渡渉するはず。さっそく前日に上州屋で購入したネオプレーンソックスを履き、アユタイツに着替えて沢歩きに備える。

再び右岸に渡渉して右岸支流の溝を横切ると道跡が不鮮明になった。慎重な人ならばここで正しいルートを見落とさないはずだが、頭の中が既に沢歩きモードに切り替わっているものだからそのまま進行。複数回(正確に覚えていない)渡渉を繰り返す間、軌道跡を全く目にすることなく期待外れの感あり。右岸の高い場所に軌道跡が在ることに気づいたのはだいぶ進行してからのこと。腹立たしいのう。

馬尾滝を見るには事務所跡の先で川床に降りなければならない。滑りやすい場所に滑り止め付の縄梯子が掛けられていた。

画像
馬尾滝


あいにく小雨状態でうまく撮れないが、美麗な姿を独り占めできて満足。次の滝マークを目指して奥に踏み込む。

右岸側には何か所か一升瓶がまとめて遺棄されている。作業員たちは酒飲みながら仕事していたのか?

見たことのない古いデザインのサッポロビールの 2リットル 瓶を記念に持ち帰った。


森林軌道は馬尾滝の辺りが終点とのことであったが、最終的には標高810m地点の辺りまで延伸されたようだ。馬尾滝の先で少なくとも木橋による2度の渡渉点があったことは確かで、散乱する曲がったレール、ボルト付の橋の残骸、及び護岸の跡等、森林軌道の遺構が数多く残されている。

両岸の低地に伐採に適した森林は存在しない。伐採の対象は両岸の崖の上にある森林地帯のはずだが、登降に用いられたと思しき場所は見当たらなかった。

レール
本流渡渉点の橋の残骸
護岸


火砕岩質凝灰岩の地域であるために水が澄み、イワナを観察しやすい。

定位するイワナ
縦方向を1.33(水の屈折率)倍に拡大済み


馬尾滝からさらに1q奥に在る滝マークの実体は、この地の滝特有の優美な水流である。水量は乏しい。

画像
左岸から落ちる水流・標高約820m


まだ時間があるし、本降りになる様子もないので遡行続行。標高840m前後から谷幅が狭まり、特に左岸側で岩盤が露出しており、滑床が断続的に現れる。左岸の壁にはおっぱいのような突起が数多くあって奇妙な景観を呈する。さらに上に行くとハンドボール大のまん丸の石頭がモコモコと飛び出ている。石頭もその周りも火山礫凝灰岩のように見えるのだが、色が異なり、石頭の方が硬そうだ。おそらく石頭の方が先に生成されたのであろうが、何故に同じサイズで丸い形で埋まっているのか不思議。

 
標高840m辺りの左岸に存在する火山礫凝灰岩の突起


奥に進むにつれて風雨が強まってきたため、安全第一で標高880mで引き返した。

画像
標高880m地点から見る右岸の崖


標高が低いため渓谷の紅葉は始まったばかり。ウリハダカエデの紅葉を見るのみ。

画像
標高850mにて


馬尾滝まで戻ってくると一時的に陽が差して雰囲気良し。右端の水流を見ようと小尾根を途中まで登ってみた。このあたりの岩質はきめの細かい凝灰岩であり、細かく剥離した凝灰岩が積み重なった小尾根はザレて登りにくい。凝灰岩の壁は浸食によって剥離することで常に表面がザラザラしており、このために適度な制動がかかってこの地に顕著な美しい水流が保たれている。

馬尾滝右端の水流
馬尾滝を右から俯瞰


「栃木県の滝」の雪田爺様が言及されているように、馬尾滝の右岸側(正面から見ると左側)の斜面に向けてワイヤーを伴う金属製のパイプが伸びる。その先には巨大なドラム缶のような構造物が見える。煙突では有り得ない。事務所の貯水施設のように思える。河内川の右岸上部に抜ける道でもあるのかと思って杖付きながらザレた急斜面を登ってみた。なんと途中から比較的新しいトラロープが這わしてある。これに頼らないと馬尾滝に落っこちそう。トラロープ上端から右岸上部の森林の端まで10m足らずだが、危険と判断し退却した。構造物はドラム缶よりもはるかに大きい。ここまでどうやって運び入れて、さらにどうやってこんな危険な場所まで引き上げたものか。

画像
馬尾滝右岸側の構造物
 


帰りは軌道跡を辿るだけで楽チン。と、思ったら、崩落してやや危険な場所が一か所在る。危険個所を過ぎると右岸支沢を渡るための橋脚跡に至る。踏み跡は橋脚跡から小尾根を下って往路で見たトラロープの這わした場所に至る。なるほどね。行きで踏み跡を見失った場所及び原因が判って納得。

右岸支沢の橋脚跡


踏み跡にはピンク色のテープが付いており、よく見るとテープは軌道跡ではなくさらに支流左岸側小尾根の上方に向かう踏み跡に沿って付けられている。この踏み跡の正体が気になって少しばかり追ってみた。陰鬱ではあるが勾配の穏やかな針葉樹林を通って踏み跡は沢奥方向に向かう。危険個所の巻き道として設けたのだろうか。帰りに軌道跡に復帰するような場所をみかけなかったので真相は不明である。

途中退却ではあったが、運動不足に沢歩きはきつく疲労感有り。帰りはグランディ羽鳥湖スキーリゾート方面に抜けるべく、西部林道をさらに東進。路面が抉れている場所があったものの、無事、今朝方見た未舗装林道の接続点に抜けることができた。結論としては、こちらから河内川にアクセスするメリット無し。

板小屋遺跡を訪問後、馬入峠を経て猪苗代の実家へ向かった。

山野・史跡探訪の備忘録