栃本から白泰山往復 (2019年10月)

年月日: 2019年10月5日(土)

行程: 栃本広場出発(04:50) 〜 登山口(05:30) 〜 分岐点(06:30) 〜 白泰山(07:40) 〜 のぞき岩(08:00 - 09:00) 〜 出発地に帰着 (12:10)

ようやく涼しくなってきたので体を動かすべく山中一泊で栃木の山歩きを計画し、余裕を持って現地入りすべく金曜午後に半日休暇を取得したのであるが、台風18号崩れの低気圧が東に抜けた後に弱い低気圧が発生する予報で5日夜の天候が怪しい。雨が降って視界が利かない状況下の藪漕ぎほどくだらないものはない。栃木行きはあきらめた。

他に行ってみたい場所は特に無いのだが、レンタカーを予約してしまっているし、少なくとも5日の日中は好天が予報されているので何かしないともったいない。過去に甲武信ヶ岳に行けるのか検討したことがあった。順応期間を経ずに標高2000m以上に長く留まると高山病の症状が出る体質のため県境縦走の計画は放棄したが、その時の地形図コピーが残っていた。栃本から十文字峠までの往復なら標高が低いから問題なかろう。出発直前に思いつきで行先を決めたもので、予備知識は栃本広場なる駐車地があることと、たそがれオヤジさんが途中まで往復した実績があることだけ。

後日、あにねこさんが実にスマートに歩いていらっしゃる記録を拝見。自分が歩いた範囲の詳細はたそがれオヤジさんが十二分に記述されている。よって、自分が登山道に関して記述する意味はなかろう。自身の関心事を主に記す。

秩父方面に車で向かうのは2013年以来6年振り。川越で国道254バイパスから県道15号に入る要領をすっかり忘れており、左車線にすんなり入れず氷川町交差点まで北上して大回りで県道15号に入った。観光名所である県道39号線沿いは平日であるのに大勢の若者で賑わっていた。

正丸トンネルを抜けた頃にはとっぷりと暗くなっていた。秩父市街のベルクで食料品を調達してから栃本へ。三峯神社方面と栃本方面の分岐があるはずの駒ヶ滝トンネルを通らぬままいつのまにか狭い秩父往還道に入っていた(2013年8月1日にバイパス道が開通して駒ヶ滝トンネルを通らない道筋となった。)。対向車が来たらどうしようかとヒヤヒヤしながら栃本入り。

栃本広場に至る道が判りにくい。2011年に川又から栃本に上がった時は分岐を素通りして大滝に下ってしまった。今回は集落突っ切って真っ暗な林道終点まで行ってしまった。栃本の上方に抜ける車道をみつけてなんとか栃本広場に到着。

予定ではここで車中泊するつもりであったのだが、次々に車がやってきて外で何か作業しているので落ち着かない(街灯りに邪魔されず夜空観察できる好適地として有名なのだそうだ。)。栃本広場で車中泊は無理と判断して林道奥側の静かな場所に移動。21時過ぎに一台の車が林道奥に進入(明け方戻ってきたので夜空観察が目的だったらしい。)。22時頃に、ヘッデンの2人組が林道奥に向かっていった(ナイトハイクだったのか夜空観察が目的であったのか不明)。

ヘッドランプを忘れてきたし、当地も5日夜の天候が持つか怪しいので山中泊はあきらめた。午前10時を時限として行けるところまで行って引き返す。できるだけ暗いうちに林道を歩いて山中で行動できる時間を確保したかったので、道路を識別できる程度に明るくなってから出発。林道から尾根に上がる入口が2か所あり、奥側の入口に達した頃には登山道も視認できるくらいに明るくなっていた。

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林道奥の登山口


入口反対側には下っていく薄い踏み跡があり、栃本方面を示す案内在り。昨晩誤って行ってしまった林道終点に通じているらしい。

登山道はヒノキ植林の斜面をだらだらと登っていく。一見下生えの無いすっきりした植林だが幹の太さがまちまちであり、手入れは一切行っておらず淘汰に任せているようだ。

この夏は暑さ対策で通勤時の階段登りを極力敬遠してきたため、運動不足で登りがきつい。できるだけ汗をかかないようにまめに熱冷まししながらゆっくり登って行った。

縦走路に接続して程なく伐採展望地に至る。メスジカが一頭跳ねていった。この場所の存在はたそがれオヤジさんの記録にも出てくるので2014年以前に伐採されたことになるが、その後植林していないのは何故なんだろうか。展望地を確保するだけならこんなに広範囲に伐採する必要はなかったろう。単純な収穫目的にしては面積が小さい。伐採地最下部に作業道が接続しているようだ。林道の最奥部からあそこまで上がって来れるのかもしれない。

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伐採地から見る秩父往還の尾根  6:40頃


標高1360mにバス停のような東大演習林の標識在り。

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縦走路横には枯れ死したスズタケのストローが残る。まだ立っているということは秩父の他の地域よりも枯れ死が5、6年遅れて進行したことを示す(事実、あにねこさんの2012年の記録の画像には青々としたスズタケが写っている。たそがれオヤジさんの2014年の記録の画像でも葉をつけたスズタケが写っている。)。標高1400m前後ではまだ一部のスズタケがかろうじて葉を残しており、完全消滅には至っていない。主な餌であるスズタケがほぼ消滅した今、秩父のシカ生息数も減少しているのではあるまいか。シカの姿を2度目撃したが、糞は一度も目にしなかった。

昨年秋に発症した右膝の鈍い痛みは解消されていない。この夏、徐々にジョギングを再開したが、ジョギング後に膝の状態が悪化することはないので骨の異常ではなさそう。しかし、普通に歩いていて痛くなることもあるので訳がわからん。変形性膝関節症なんだろうか。しばらく休むと痛みが緩和されて歩行再開できる。しょっちゅう休むので過度に汗かかずに済むという点では悪くもないかな。ま、爺になったってことだ。

このペースだと十文字峠まで日帰り往復は難しそう。白泰山往復がせいぜいだろう。進行方向に白泰山らしき顕著なピークがちらちら見えるのだが、なかなか近づかない。

眺望を得られる場所の無い単調な歩きなので退屈。こんなとき、植生的に面白いものがあればよいのだが、秩父は全般的に植生が貧しい。特徴はツガの大木が多いことと、地表が苔生していることくらいか。こうなるとキノコや苔といった地味なものしか観察対象にならない。

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白泰山の北側斜面は一面のシダに被われている。

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白泰山登り口


白泰山に登る道は岩ゴロゴロで不明瞭。眺望ないし、樹陰で暗くて風に吹かれると寒い。登る価値はないな。

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白泰山山頂
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三角点


山梨県側から秩父側に勢いよく雲が流れ込んでくるのが見えた。このまま曇ってしまうんだろうか。

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白泰山から見る県境尾根


山頂から稜線沿いに不明瞭な踏み跡を辿っていくと、東大秩父演習林が設置したシカ排除柵影響評価試験地がある。立ち入り禁止の柵の中に何かを収集する目的の白いネットがぽつんと一つ設置されている。これと同じものが演習林の中に何か所か設けられているようだ(画像は縦走路北側にある試験地のもの)。

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途中陽だまりで軽食休憩してから縦走路に復帰。程なく白泰山の避難小屋に到着。相部屋にならなければ小屋に泊まってみたいところだが、どのみちヘッドランプ持ってこなかったから今日は無理。

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白泰山避難小屋
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小屋内部


一応古道らしく観音様在り(二里観音と呼ばれていることは後日知った。)。

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二里観音


避難小屋のすぐ先に展望地が存在する。予備知識がなかったので儲け物した気分。一時県境尾根に掛かっていた雲も消えた。本当に夕刻から曇ってしまうのか。

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のぞき岩から見る白泰沢の谷と県境尾根


右足の具合は相変わらずで、適度な休憩を挿めばもう少し歩けそう。しかし、十文字峠に至るまでのアップダウンの往復には5時間程度要すると思われ、疲労を考慮すると日没までに下山できない可能性が高い。そもそもここまで戻ってくることすらできなくなるかもしれない。どうせ中途半端になるならば安全を見てきりの良いこの場所から引き返した方が良い。時間を持て余し、日当たりの良いのぞき岩で衣服が乾くのを待って1時間の大休止。

岩場を這いずり回る体長2p程度の白いヤスデの存在に気付いた。こんなヤスデは見たことがない。周囲をよく見るとたくさんいる。その存在に気付かず岩場を動き回って既に何匹か踏みつけてしまっていた。すまん。

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白いヤスデ(種名判らず)


とにかくせわしなく岩場を縦横に動き回る。あっちに行ったかと思うといつの間にか足元に迫っているので気が抜けない。餌をあさっているようにはみえないのだが、何を目的とした行動なのだろう。この山歩きで最も面白い発見だった。

岩場の岩質は硬いチャートである。人目につかないところにボルトが2本打ち込んである。こんなところまできてロッククライミングする輩がいるのか?

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本日は平地では気温30度が予報されているので涼しいうちに下山しよう。縦走路の横に見えているのは八ヶ岳か?何度も栃本に来る気にはなれないから、この景色の見納めになるかもしれんな。

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1818m峰、1819.1m峰、遠くに八ヶ岳


下り始めてすぐに、恐れていた左足の違和感も発症。左足の膝関節は正常であり登りと平地歩行では全く問題ない。ところが標高50m程度下るうちに左脚を持ち上げる時に膝外側に奇妙な感覚を生じるようになり、下り続けるうちに徐々に強くなって最後には痛くて歩行できなくなってしまう。しばらく休むと消えるのだが、下り続けると再発する。その繰り返し。今年6月に初めて感じた症状で、山下りで発症したのは8月の渓流釣りに続いて3度目。一度診察してもらおうかな(どうやら腸脛靭帯炎らしい。)。

どうやったら楽に歩けるのか試しているうちに、右足を先に出して左足を曲げずに斜め歩きすると休むことなく安定して下れることが判った。真っ直ぐ足を繰り出せないので様にならん。人の多い場所には行けないな。

標高1,520m付近で2人組のパーティと単独行の男性と遇った。まだ10時前だから白泰山往復なら余裕だろう。

登りでは気づかなかった倒木のベンチ発見。道を整備した方の粋な計らいですな。

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倒木のベンチ(標高1500m付近?)


伐採地で和名倉山を眺めて一休み。

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和名倉山


伐採地から植林地に入ろうとしたとき、尾根上からカサッバキッという音が聞こえた。獣かと思って覗いてみると、尾根筋を登っていく単独行の男性が見えた。本日山で見た人は計4名。

足掛かりの無い山道で斜め歩きすると常に右足のつま先に圧力がかかる。林道に降り立ったときはつま先の状態が限界に近かった。白泰山で折り返したのは正解であった。

林道終点には2台の車があった。日陰になっていてしかも林道歩きを少なくとも30分以上省略できるのだから駐車地としても出発地としても最適ではないか。自分もそうすればよかった。

栃本広場方面に林道を歩いて行くと法面で草を食む大きな動物を発見。牛?そんなばかなと思ったら、もたげた頭には立派な角が生えている。図体がでかいので後ろから見ると牛にしか見えんぞ。

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オスジカ


奴はお食事に夢中になっている。近くに行って驚かさないよう、「オーイ」と一声かけて手をパンパン叩いてお知らせ。邪魔して悪かったな。

正規の登山口にも1台の車があった。遇った3パーティは皆、栃本からの往復ということになる。車に戻って正規の登山口近くの日陰に移動して着替え中に1台の車が来た。ご夫婦らしき男女は登山の準備を始めた。既に12時半を過ぎているので避難小屋に泊まる予定なのだろう。

林道沿いの日当たりの良い何か所かでホオズキを見かけた。先日テレビで食用ホオズキなるものがあることを知ったばかりだ(ヨーロッパ原産の食用ホオズキはおいしいのだそうな。)。普通のホオズキは不味くて食えないはずだが、試しにひとつ採取して味見してみた。子供の頃に感じた味そのものでとても食えたもんじゃない。日本のホオズキはあくまで観賞用です。

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帰りは川又に下って140号バイパスに抜け、中津川沿いに戻った。

山野・史跡探訪の備忘録