足尾で紅葉狩りその2 (2020年10月)

年月日: 2020年10月25日(日)

行程: 銀山平出発(05:30) 〜 笹ミキ沢右岸尾根取り付き(06:10) 〜 1,261mポイント(06:58) 〜 1,461mピーク(時刻不明) 〜 舟石新道跡出合・標高約1,460m(08:16) 〜 ピッケル捜査 〜 水ノ面沢-笹ミキ沢間尾根復帰 (09:17) 〜 標高1760m(10:40) 〜 標高1850m(11:14) 〜 庚申山登山道 〜 猿田彦神社跡(12:04) 〜 一ノ鳥居 (12:48) 〜 銀山平帰着(13:40)

本記録では地形図に記載されていない俗称(塔ノ峰、向山、熊ノ平、日ヶ窪峠等)を使用しておりません。

先週、舟石新道跡の最後の区間を脱出する際に護身用のピッケルをどこかに落とした。あれから一週間経って足尾の紅葉が見頃を迎えているはず。晴れの予報であったので、ピッケル探しついでに2週連続で足尾に紅葉狩りに向かった。

あの嫌らしい場所にどうやってアクセスしようか。舟石新道跡を辿るのは嫌だ。最後は水ノ面沢-笹ミキ沢間尾根を登り切って庚申山に上がってしまいたいので、お山巡りコースから一旦下るのも気に入らない。どうせなら水ノ面沢-笹ミキ沢間尾根を末端から取り付いて通しで歩いてしまおう。笹ミキ沢遡行した帰りにこの尾根を下ったという記録も見たことがある。何か所か勾配のきつい区間があるが、登っていくことは可能に思える。

深夜に現地入りしてお気に入りの場所で仮眠。朝4時頃に銀山平に向かっていく車があった。気合入ってるよな(帰りに走って抜いていった、青いヘルメット被った大柄な男性だと思う。アメフトの選手かと思ったよ。ヤマレコの記録では 4:18 にスタートして往路は庚申山経由で皇海山へ、帰路は六林班峠経由で 13:21 帰着とのこと。ぶっ飛んでます。)。早朝の気温は6℃で先週と変わらないが、今日は風が強く寒く感じる。頭上は晴れているのだが県境方面に雲が見えるのでおそらく山上は強風が吹いて寒いだろう。水ノ面沢-笹ミキ沢間尾根は風裏に位置するが、当初案通りに実行するか取り付き予定地で判断するつもりで出発。

笹ミキ沢に架かる橋で高度計を合わせていたら鈴の音が聞こえてきた。テンポが速いので若い健脚者のようだ。この歳で若い人と競う気はないけど、朝一からブチ抜かれるのもなんだかね。取り付き予定地は目と鼻の先。当初案を試すべく擁壁の端から這い上がった。ヘルメット被った若者がスタスタと歩いていくのが見えた。気合入ってますな。藪歩きのスタイルではないから皇海山登山が目的かな。冷たい風に吹かれて寒かったのではなかろうか。

現在地は浅い谷型の地形で、左手に小規模な植林がある。右手の樹木が生えていない斜面を適当に登って笹ミキ沢を見下ろせる尾根筋に乗った。古い切株があったが、伐採されてからかなり年月が経っているようで、一見自然林と変わらない。うっすらと踏み跡があるがおそらく獣道だろう。目印もワイヤーも見かけない。

標高1,030m辺りで直径2〜3cmの野生リンゴが多数落ちている場所があった。これはめずらしい。高木なので葉を直接確認できないが、周囲にリンゴの葉特有の特徴を持つ落葉があった。栃木県で野生リンゴを見たのは塩原の高原道に続いて2度目。正式名称はオオウラジロノキだそう。

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オオウラジロノキの実
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オオウラジロノキの葉


標高1100mから1150mにかけて勾配がきつく、上から見ると安全に下れる感じがしない。下りに使う場合はロープがあった方がよいだろう。撮影には向かないが陽光に紅葉が映えるカエデの木があって雰囲気は悪くない。

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標高1,150mの肩に上がってしまえば、しばらく起伏のない針葉樹の生える尾根を快適に進める。高度が上がるにつれて樹木がマツからコメツガに移行する。

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標高1,270m辺りから適当に獣道を追って約80m急登する。樹皮の剥がれるサイズがが大きい(縦に30p位)樹木があった。特徴があるからすぐに樹種特定できるだろうと思っていたのだが、いまだ特定できていない。黄葉しているし葉が卵形である点はヒトツバカエデに似るが、カエデ属はこんな樹皮をしていない。アサダにしては剥がれるサイズが大きいような。この辺り、個体数は少なくないみたいだ。

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樹種不明(アサダ?)
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樹種不明(アサダ?)


1,360m級の尾根から、笹ミキ沢左岸側の斜面に鮮やかに紅葉したカエデが点在している様子が見える。これこそ自分が期待していた光景だ。

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笹ミキ沢左岸の紅葉(1738mピーク南尾根の末端部らしい)


コメツガ樹林を抜けた標高1380m級の平坦な場所にはミヤコザサ原が広がる。まるで送電線鉄塔のように管理されているかのよう。南東に開く谷の雰囲気がよい。

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標高1380mの笹原
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南東の谷の雰囲気


標高1400m級の棚はミズナラの木が多く、クマに折られた枝が目立つ。クマの糞だらけで、久しぶりにクマの糞踏んでしまった。臭くないからいいけどね。今年は山の実りが少ないらしいが、数少ないドングリ求めて枝を折りまくっているのだから餌不足は相当深刻なのだろう。この調子で枝折りまくったらは来年はもっと餌がなくなるんじゃないか。冬ごもりに十分な栄養を蓄えることができなければ必然的に麓に下りてきて人間とトラブルを起こす。今年はクマにとってもミズナラにとっても受難の年らしい。

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ミズナラの木
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クマの糞
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ドングリはきれいになくなっている。
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ミズナラの枝が散乱


標高1462mピークには特徴がなくあっさり通過。対照的にその先の鞍部の地形が面白い。尾根の続きのように見える方向は行き止まりで、右側の笹原の先にある小高い場所(1440mピーク)に登ればよいことは地形図を見ずとも判る。ところが、このピークの先が急に落ち込んでいて行き止まりのように感じる。少し戻って北東側の斜面を巻いたのだが、振り返って見たピークはごく普通の斜面に見えた。

1738mピーク方面から風が渡る「ゴーッ」という音が響いてくる。尾根上は雰囲気悪そう。

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1738mピーク方面


クマに出遭うことなく順調に舟石新道跡に到着し、ピッケル捜査開始。

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標高1460m で舟石新道跡出合


まずは先週退却した地点まで舟石新道跡を辿る。先週ウロチョロして要領を得ているし、陽光があるので気分的に余裕がある。

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こんなところで落ちたら助かりませんぜ。


岩の間を降りる場所に到着。左手の岩場に上がってみた。庚申山の最高のビューポイントである。わざわざここに道を通したのはこの眺めを得ることが目的なのかもしれない。現在地は風裏にあたるが、それでも時折強い風が吹いて汗拭きタオルを飛ばされた。

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先週は余裕がなくて特徴ある場所の写真を撮ってなかった。

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先週エスケープすべく登った小尾根に到達。ここも岩に人為的な窪みがあるな。

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ピッケルをザックの横に括り付けた場所はここだ。先週歩いたコースを忠実に辿れば見つかるはずなのだが、1時間探しても見つからなかった。いくらか紅葉を愛でることができて徒労感はない。やるだけのことはしてあげたと納得して水ノ面沢-笹ミキ沢間尾根に復帰。

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相変わらず遠くから風の渡る音が響いてくる。とりあえず尾根登り続行して庚申山東のコメツガ林の緩斜面に上がってしまおう。山上の様子を見てその先の行程を考える。

先週同様に尾根を登っていくと、嬉しいことにピッケルを発見。落としたら音で気づきそうな場所だが、そのくらい余裕がなかったということか。

標高1520mの肩は雰囲気がよろしい。

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カエデ
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ゴヨウツツジ
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サラサドウダン


お山巡りコースで高度を稼ぎ、標高1680mでコースを離脱して尾根登り続行。特に危険個所無し。1738mピーク方面の眺め良し。東隣の尾根の標高1650mから1700mにかけて派手な場所がある。色合いからゴヨウツツジであろうと推測する。

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1738mピーク方面
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不要な場所にピンクテープと古い青い荷づくり紐の目印がついていたので、できる限り除去した。コメツガ林の緩斜面は部分的に疎林となっていて、オロ山方面の眺め良し。

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コメツガ林の緩斜面
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オロ山方面


雲の流れがとても速く、状況は2013年10月13日にオロ山北尾根を登った時に酷似する。しかも今日はその時よりも気温が低い。尾根歩きは止めて、風裏の登山道辿って早めに帰ろう(天気図比較してみたらそっくりだった。)。

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2013/10/13 09:00 と 2020/10/25 09:00 の気圧配置の比較


庚申山に登るなら眺望なくつまらない山頂よりも東側の崖の上に行くのがよいと思うのだが、こちらに登山道を設けないのは何故なのか不思議に思っていた。その理由が登山道下ってみて判ったような気がする。

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庚申山山頂方面
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水ノ面沢の谷


嫌らしい登山道の下り開始。まだ12時前だから登ってくる人がいる。全部で15、6人はいたように思う。山荘泊まりだとしても今から登って鋸山には行けまい。この鎖や梯子だらけの危険な場所を通ってつまらない山頂まで往復するだけだ。なるほど、この人たちはこういう場所を登降するのが目的で来ているのであって、きっと安全な登山道を辿ることには意味がないのだ。庚申山はスリルを味わえる登山道がウリであって、安全な登山道では奥袈裟丸とたいして変わらない。

水ノ面沢沿いの道を下る間も何組も登ってくる人達がいた。皆今日は山荘泊まりか。一ノ鳥居を通過した時、左手の尾根を年配者集団が降りてくるところであった。挨拶も満足に返さない人たちだったので、どこに行ってきたのか確かめず。尾根を登った先にあるのは1462mピークだが、あんなところに行く意味があるとは思えない。何が目的だったのだろうな。

車道にもミズナラの枝が落ちていた。頭上を見ると落石防止のネット上部から道路上にミズナラが張り出している。その枝先にクマが居たことになる。あんなところから落ちたら助かるまい。そのくらい餌に困っているのだ。

舟石峠の駐車場で少し仮眠して、水神宮碑と鉱山神社を訪ねてから帰路についた。今回は足の痙攣はなかったものの、筋肉痛が消えるまで長くかかったし、ちょっぴりではあるが腸脛靭帯炎の気配もあった。今の体力で帰りに尾根下り選択しなかったのは正解だったな。

山野・史跡探訪の備忘録