下武生 〜 竜神川遡行 〜 554.8mピーク(2020年11月)

年月日: 2020年11月22日(日)

行程: 下武生公民館出発(08:15) 〜 (道間違えによるムダ歩き15分) 〜 左岸側支流横断点(08:57) 〜 竜神川到着(09:07) 〜 沢歩き準備して遡行開始(09:27) 〜 退却(北緯36.704986/東経140.441885の辺り、時刻不明) 〜 尾根上に這い上がって着替え(北緯36.704559/東経140.443301、標高305m、11:30) 〜 標高554.8mピーク(基準点名:西久保、通称:中武生山、12:49) 〜 武生林道のカーブ(標高450m、13:07) 〜 武生神社立ち寄り 〜 下武生公民館帰着(13:55)

2020/11/28 あだ名さんの「奥竜神 遡行 下の廊下 -2020-01-19」及び「中武生444P〜奥竜神渡渉〜裏縦走路へ-2019-12-07」の記録を参考にして退却地点とエスケープ地点を修正。

毎週土曜日は静養の日。今年も奥武蔵で紅葉見納めとしようかと思い、行き場所を物色して地形図準備し終えてから気が変わった。おそらく標高600m以上は紅葉が終わっているであろうし、既に狩猟が解禁されているので今行く必要はない。もっと標高が低い場所で紅葉が残っていそうな奥久慈に着目。紅葉の時期に車で奥久慈に行ったら渋滞に巻き込まれるのは必然。人が少なそうな場所はないかと近隣の地形図をみていて、竜神川の存在が目を惹いた。茨城に観光目的の大きな吊り橋ができたと聞いたことがあったが、場所が竜神峡であることを初めて知った。

地形図上では下武生から大久保に至る破線路しか記載がないので、一般行楽客はいないはず。勾配のきつい山岳渓流ではないから、沢底が歩きやすいのであれば上武生まで遡行して武生林道を歩いて戻ってくるのは容易に思える。途中で安全にエスケープできそうな場所が地形図上に見当たらないので、自分の安全基準を満たさない危険個所があれば引き返すつもり。直前に行き先を決めたので事前に遡行記録の調査はなし(予め知っていたらこんなところには行かなかったと思うので、他者記録を見ないのはある意味正解であった。)。栃木県在住時、茨城は海釣りに行く時に通過するだけの存在であり、そのお粗末な道路事情のせいであまり良いイメージがなかった。山歩きより、そもそも現地にアクセスできるかどうかが関心事。グーグルストリートビューで武生林道の入り口までは行けた。こんなに狭いの?で、入り込もうとしたらグーグルめ、取材してないらしく進入できない。人家のない行き止まりの狭い林道ですら取材しているのに、奥に人家がある貫通林道が取材されていないとは。ますます不安になった。その一方で、武生神社をクリックすると神社の境内だけは見ることができるのだ。これには笑ってしまった。

さいたまから茨城北部へのアクセスは不便極まりない。不要不急の山歩きごときのために高速道路は使わない主義。水戸をすっとばして北に抜けるには国道6号を利用したいところだが、さいたまから国道6号に入る前に、鬱陶しい南流山や柏を抜けないうちに神経が参ってしまう。余計なことを考えず、国道4号で北上して国道50号で水戸入りすることにしたのだが、同じ国道50号でも小山の東西でこんなに違うものか。一車線区間がやたらと多くてトロトロ。2車線になると、日本で有数の暴走県の本領発揮。茨城は昔と何も変わってねーな。予想よりも時間がかかって、太陽と信号機が重なる時間帯となり、眩しくてしょうがない。水戸市街地をパスして国道6号に合流してようやく運転が楽になった。

武生林道に怖々進入。入り口だけかと思ったら、山腹をくねくね登っていく間は退避点を除いてずっと怖い。奥武蔵の山の中みたいだ。帰りは渋滞覚悟で反対側に抜けてしまおう。武生神社の手前に下武生公民館がある。駐車スペースが広くて公衆トイレもあるので、ここを出発点とする。朝夕曇って日中だけ晴れてくれればよいのに、今日は全くの逆。現在地だけ曇ってやがる。

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宝剣洞展望台から見る明山方面   8:20頃


地形図眺めたときはピンとこなかったが、この辺りの地形はどこも険しい。落ち葉の積もった細いトラバース道の区間が多い。細い尾根道は南房総のフラットな山襞を連想させる。こんなところは野生動物の生息にも向かなそうで、鳥獣保護区指定がなかったとしてもハンターはこないだろうな。

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歩道入り口の行き先標示は「亀ヶ淵」となっており、「大久保」の標示はない。これ以外に道がないのだから地形図の破線路であろうと信じて下っていった。右側にやや細い道が分岐する場所にも道標があり、分岐する道の案内はない。亀ヶ淵方面の道をだいぶ下ってから、340m級ピーク北には向かわず本当に亀ヶ淵方面に下っていることに気付いた。先ほどの小径が本来辿るべき道だったようだ。登り返しでしこたま発汗。この間、後続3人組が亀ヶ淵に下って行った。

何故に案内がないのか?「亀ヶ淵」に下る道に比べれば細くやや危うい場所もあるが、それなりに辿れるし、利用する人も少なからずいる感じだ。竜神川左岸側支流は狭く且つ深い淵があるようで遡行困難と思われる。支流が予想していたより険しい様相なのでヤル気がそがれる。

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竜神川支流


竜神川に入るために乗り越す尾根は植林されており、踏み跡はザレ気味。340m級ピークは立ち木が多くて容易に登って行けそうであるが、眺望今一つらしいし、昨日から腰が痛いのでパス。ズルズルと滑る道を怖々下っていくと、竜神川の下流側に人の姿を発見。昨晩ここでテント泊したらしい。上流側はいきなり水たまりでスギの木が倒れこんで醜い。

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遡行開始してすぐに通過困難箇所現る。へっ?もう終わり?左岸側に人工物と思しき板が架けてある。右手の壁にはなんと鉄杭が打ち込まれており、鎖も這わしてある。鉄杭は安定しており、それなりに資金を投入してコースを整備した過去があることを物語る(ブログ「登山・花日記」の2009年の遡行記録(http://yamasanpo.blog106.fc2.com/blog-entry-211.html)に拠ると、昭和49年と平成14年に茨城国体山岳コースとして整備されたとのこと。)。コースとして整備されているなら予定通り遡行できるかもしれない。その気になって先に進む。

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ナメ床をヒタヒタ歩くイメージとは程遠い。急流ではないのに大岩が連なる場所が何度も現れる。どこから転げ落ちてどのように流されて溜まるものか理解に苦しむ。おそらく数百年か数千年の間、岩の位置関係は変わっていないのではないか。この辺りの地質は新第三紀(約1600万年前)の男体山火山角礫岩だそうで、大小の安定した角礫が出っ張って足掛かりが得られるため、花崗岩質の沢に比べると岩を越えていくのは容易。

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大岩で分断された川で水がチョロチョロしか流れていないが、水たまりには必ずといってよいほど小型の魚の姿を見る。自然分布であるならばアブラハヤではないかと思うが、確認はしていない。

グーグルアースの写真では地形図記載通り広葉樹が多いので沢沿いの紅葉を期待したのだが、両岸が高いところまで岩壁になっていて沢沿いにきれいに紅葉した樹木は少ない。

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下の写真の場所は左岸側壁に大きめの手で握るタイプの鉄杭が打たれていて鎖はなし。

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下の写真の場所は右岸に古びた瘤つきお助け紐が下がっている。足掛かりはあるのでロープの荷重を軽めにして体を持ち上げた。

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どこまで行っても変わり映えの無い光景にだんだんお腹一杯になってきた。腰が痛いことも気になってちっとも楽しくない。紅葉期待できないのならば沢遡行する意味ないのだが、エスケープする場所が現れない。どこもかしこも似たような場所の連続で、方位と地形を見ても現在位置を特定できない。本日はお気楽な遡行のイメージで臨んでいるので懸垂下降の装備は所持していない。変な場所を這い上がったらそこで終わりだ。つまらない場所を戻る気にもなれないので我慢して遡行続行。

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倒れたケヤキに腰かけて軽食休憩。

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この後、左岸上にロープが続きピンクの目印が着いている場所がある(あだ名さんが「意味がわからない。」とコメントした場所と思う。)。遡行困難箇所ではないのでどうやらエスケープルートであるらしい。この辺りからエスケープすると長いこと山の中を歩くことになりそう。できれば当初案通り林道に簡単に抜けるのが望ましい。もう少し探って遡行困難だったらここに戻って来よう。

しばらく西方向に直進する。この辺りは足を濡らさずに遡行することは困難だが、深くても腰程度なので無理せず浸かって突破した方が安全且つ早い(先に紹介したブログ主はここも足を濡らさず突破したそうだが、スパイダーマンじゃないの?自分が鉄杭やロープを見落としたのだろうか。)。

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次第に幅が狭く且つ深くなってきた。しばらく鉄杭の類を見ていないので整備されたコースは先ほど見たエスケープ場所までなのかと思った。ところが右岸側の上方にロープが這わしてある。少し戻ってみると、鉄杭にロープが結わえられており、谷底から高さ10m程度の場所をへつっていく。一か所危うい場所もある。さて、どうやって降りるのだろうと思いながら進んでいくと、長い瘤付きロープがベロンと垂れているだけ。冗談だろ。そんなことまでして行く意味はない。自分で懸垂下降する方がはるかにマシ。古い鎖やロープに全荷重を預けることはもうしないことに決めているので退却決定。その先は再び遡行し易そうであったが悔いなし。

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退却箇所


エスケープ箇所と思しきロープを追ってみた。ところが少し登るとロープは上流側に下っていくように見える。訳がわからん。沢靴のまま枯れ死したスズタケのストロー藪の急斜面をまばらな灌木に掴まりながら這い上がる。目印も踏み跡も無い。???岩場が次から次へと現れる。騙されたのか?それとも、またしても不注意でルートを見誤ったのだろうか。緊張状態が続いて頭が痛くなってきた。行き詰るかもしれないというのに、冬ごもりしたイワヒバの姿が面白くて登攀中に1枚撮影。日当たりの良い乾燥した岩場にべったり生えている。

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イワヒバ


乾燥した尾根突端に上がった。奥久慈にクマはいないはずだが、何物かによる溜め糞がどっちゃり。竜神川右岸側は高度500m前後の尾根が続き、地形図上で特定できる顕著なピークがないため、どれが籠岩なのかさっぱり判らん。北東側に見える山との位置関係で444mピークの西尾根末端にいるように思える(たそがれオヤジさんが中武生山から下ったときに2度目のミスをした尾根であることを後日確認。)。幸いなことにこのまま尾根を登って行けそうであったので藪歩きの服装に着替えし、ノーシンを服用。

尾根を登っていくと再びピンクの目印があった。進行方向左手の谷から踏み跡が上がってきている(あだ名さんの記録に拠れば、標高340m辺りの尾根分岐地点であったようだ。)。尾根伝いに抜けられることが確定したのでひと安心。

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竜神川奥部(おそらく持方地区)
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554.8mピーク(通称: 中武生山)の南南東の肩
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明山


スズタケ藪の中の踏み跡を追う。久しぶりにスズタケ藪を見ると新鮮に感じる。

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あいにく曇り空ではあるが、山にエスケープしたおかげで自分好みの紅葉を愛でることができた。

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メグスリノキ・444mピークへの登り
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444mピーク東の植林地・背景は武生山
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554.8mピーク南南東の肩の南斜面


554.8mピーク南南東の肩に向けて登っているとき、前と後ろから大きな声が聞こえてきた。現在地より上にいる者が、下側にいる仲間の位置を確認しているみたいだった。

上から下ってきた男女: 「人に会いませんでした?」

自分: 「いいえ、声は聞こえましたけどね。」

上から下ってきた男女: 「こっちの方ですよね?」

自分: 「たぶん。」

554.8mピークの尾根の上と下から2パーティに分かれて山登りしていたんだろうか。

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最も高いところで見た残り紅葉


三角点ピークに到着してようやく自分の居場所を特定。進行方向左側に民家が一軒見える。どうやらあそこが中武生らしい。ところが中武生方面に向かう尾根には踏み跡らしきものがない。あるべきところにない道を見失うことにかけては天才クラスだな。少し戻って東に下る。落ち葉が積もって滑って歩きにくい状態ではあるが、踏み跡がないのに比べればはるかにまし。

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武生林道への出口


武生林道を歩いているうちにパーッと青空が広がった。山歩き中にずっと曇り空だったのは残念だが、締めくくりまで曇り空であるよりはましだろう。

武生神社に立ち寄り。この神社には仁王門がある。本殿の彩色も綺麗。裏手の太郎杉が立つ林を抜けて北側から車道に下りて下武生公民館に戻った。

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武生神社
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太郎杉


帰りは国道461号線で大子から馬頭に抜け、烏山から高根沢経由で国道4号線に入り、通い慣れたルートで順調に帰着。

山野・史跡探訪の備忘録