上名栗の未訪尾根経由で蕨山 (2021年2月)

年月日: 2021年2月21日(日)

行程: 名郷有料駐車場出発(07:28) 〜 送電線・標高410m(時刻不明) 〜 TVアンテナ・標高540m(時刻不明) 〜 崩落地上部・標高約720m(08:48) 〜 標高820m(09:22) 〜 標高920m(09:32) 〜 登山道出合い(09:44) 〜 蕨山(10:25) 〜 橋小屋の頭(10:25) 〜 鳥首峠(時刻不明) 〜 白岩・JFEミネラル武蔵野鉱業所跡地(12:28)〜 名郷に帰着(13:18)

禁猟期間に入ったので足慣らしにでかけた。登りは順調であったが、案の定、下り初めでさっそく腸脛靭帯炎を発症。これまでの経験で、症状の悪化を抑える歩き方を見出している。時間はかかったものの桐生で発症したときのように悪化させることなく下山。地形図を忘れるドチョンボをやらかして、安全策をとって既知のルートで下山したが、お天気が良くて満足のいく山歩きであった。

昨年暮れに林道・西名栗線 を人見入に向かって歩いた際、小尾根を回り込む度に正面に見える尾根に存在感があった。ほとんど植林された尾根ではあるが、2か所ほど傾斜のきつい区間があって、辿れるのか試してみたいと思った。地形図で調べてみると、この尾根は逆川沢左岸尾根の蕨山東方の標高975m辺りから派生して北東に伸び、末端部が大きく2筋に分かれて、一方は名郷、もう一方が人見に下る。危うげな場所がある未知の尾根は登りで辿るに限る。帰りは昨年の林道・西名栗線を歩いた時にある程度様子を把握済みの炭谷入左岸尾根を下ってこよう。

人見から送電線鉄塔巡視路利用で尾根に上がれそうなことは、林道・人見入線を下ってくるときに確認済み。しかし、名栗にはよそ者が車を停めるスペースがほとんど存在しない。やむなく、名郷の有料駐車場を利用し、蕨山に向かう登山道から適当な場所で尾根に取り付くことにする。

駐車場到着時、先客は3台。舗装路と川の崖の間のわずかなスペースに皆後ろ向きに駐車していたが、よくそんな怖ろしいことできるものよ。車輪止めないんだから、操作誤ったら名栗川に落っこちる。以前勤務していた栃木の事業所では節税対策のために社員用駐車場が未舗装だったことを思い出した。ここを舗装する必要などないが、実際のところ税法上どういう扱いになっているのか、料金(\700)払った手前、ちょっと気になるところではある。

橋を渡って蕨山登山道でもある林道・蕨入線を進むと、左側に上がっていく道が分岐する。しめしめと思い進入してみると、通せんぼこそしてはいないが、「関係者以外立ち入り禁止。通り抜けできない。」旨の注意書き在り(布告主は西山荘・笑美亭)。

そうかい。巡視路すら辿らせてくれないってことですかい。ならば手前から取り付くしかないやねってことで、いきなり急勾配の植林地を直登(とはいかずシカやイノシシの獣道利用して20m程度這い上がる。)。運動不足でたったこれだけで心臓バクバク。

緩勾配の植林地をしばし進むと秩父線の茅野のベルト地帯に抜けた。

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秩父線送電線下の茅野


冷気が溜まる谷底は手袋をしても手が悴むが、尾根上は暖かい。しかも本日はほぼ無風だ。ジャケットとセーターをしまい込み、この日は最後までシャツ1枚。

標高570mピークで休憩した際に地形図にメモしようとしたら、地形図がない。ジャケットを脱いだ時に置いてきてしまったのか?150mも下って回収する気にはなれない。かといってスマホのGPS頼りの屈辱的な山歩きをする気にもなれない。登りは地形図なんざ要らないからこのまま登りを続行して適当に登山道を下って戻ることにしよう。万が一、この尾根で行き詰って戻ってくることになっても、様子を把握しているのでルートを見誤ることはあるまい。

この尾根の左側(東南東斜面)は一貫して手入れ状態の良いヒノキ植林地、右側(西北西斜面)はほぼ全て落葉樹の急勾配斜面である。稜線上に藪は無く、ヒノキ植林地と広葉樹林の境目に馬酔木が生えているのみ。

標高720m辺りで西北西側斜面が稜線からゴソッと大規模に崩落している(地形図には記載なし。)。

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崩落箇所・標高720m付近  08:40


標高770mの平坦な尾根を進んでいくと、蕨山の左側に針葉樹に覆われた急峻な場所が見える。標高800m前後の急勾配は比較的勾配の緩い右側広葉樹斜面の獣道を適当につないで抜けた。標高860mから上の核心部も要領は同じだが、先ほどよりも勾配がきつく且つ200m下方まで見通せるのでちと怖い。幸いなことに立ち木がまばらにあって、フリクションも良好のため、アクシデントなく標高920mの肩に北側から這い上がった。下ってくる場合はうっかり尾根を真っすぐ進むと急峻な場所に引き込まれてしまう。補助具なしで下るにはぎりぎりの勾配と思われるので、少なくともロープは所持していたほうが良い。

この先、まだ難所があるのだろうかと思いながら植林尾根を登っていると、前方にトレランっぽい登山者が下っていくのが見え、登山道に達したことを知る。まだ午前9時台だ。もう少しエネルギー消費したいので鳥首峠から白岩に下ることにしよう。

蕨山展望台(標高1,033m)では青いウェアの男性が写真撮影中(この方とはこの後、相前後しながらしょうじくぼの頭とヤシンタイの頭の中間地点までご一緒することになる。)。蕨山には過去2回来ているのだがほとんど記憶が無い。最後に来たときは山頂から直接名郷に下りたような記憶があった。地形図持っていないものだから蕨山展望台を蕨山山頂と誤認識し、何か腑に落ちないまま橋小屋の頭方面に向かった。蕨山展望台から名郷への登山道分岐までの短い区間で2パーティ(計4名)と遇った。蕨山山頂(標高1,044m)を通過したという認識なく西進。

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橋小屋の頭・1163m


橋小屋の頭から下り始めてすぐに左脚の腸脛靭帯炎発症。早すぎだろ。コロナのせいで在宅勤務となり冬場の唯一の運動機会である通勤時の階段昇降を全くしていないので、登りはまだしも下りにつかう筋力が衰えているようだ。ここから舗装路まで標高総和 750m程度下るというのに、はたして耐えられるのだろうか。

ヤシンタイの頭に向けて登っている途中でセカセカハアハア急ぐ若い兄ちゃんが抜いていった。続いて蕨山展望台に居た方ともご挨拶。林道終点から登ってくるフェンス通路のある場所(ヤシンタイの頭としょうじくぼの頭の間)でしばしこの方と会話。出発地は自分と同じで、大持山まで行って妻坂峠から下るのだそう。今の自分の体力ではできないな。イントネーションから関西出身の方と思われた。秩父の山々は未訪とのこと。

行程が長い彼が先に去った後、しばらく昼食休憩。

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未舗装林道終点を見下ろす


植林が行われてから9年近く経過しているが、植え方が悪かったのか、大雪のときに潰されたのか、はたまたフェンスの維持ができなくてシカが侵入して荒らしたのか、順調に育っているヒノキはわずかだ。稜線の登山道まで埋め尽くすススキと石灰岩の露頭の組み合わせが面白い。

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滝入りの頭方面


2011年以前の伐採によって出現した眺望であるが、あと10年くらいは維持されそうだ。

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長沢背稜(蕎麦粒山 〜 三ツドッケ 〜 坊主山・大平山)
酉谷山は坊主山の背後。小黒が少し見える。右端は矢岳。


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滝入の頭から有間山方面
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滝入の頭から大持山方面


本日最後の登りを終えて秩父線鉄塔に至った。2015年に閉山したとのことだが、2012年にここで撮った写真とくらべてみると、2012年の段階でほぼ採り尽くしていたようだ。

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白岩の石灰岩採掘跡地


鳥首峠から白岩までは段差の少ない脚にやさしい下りなのだが、それでも普通には歩けない。左足をから右足に荷重を移して膝を持ち上げる際に独特の痛みが走るので、膝の屈伸を伴わない歩き方しかできない。段差のない場所ではがに股で小刻みするか、左足を伸ばしたままの斜め歩き、段差の大きい場所では左脚を先に着いて右足を揃える繰り返し。時々失敗して痛みが走る度に、ストレッチと休憩で痛みを解消。白岩の廃墟の近くまで降りてきたとき、鈴の音と人の会話音が聞こえてきた。ズリの近くの木陰で休憩してやり過ごす。複数名のパーティではなく、ラジオをガンガン鳴らすオッサンだった。

車道に降りる寸前の排水溝の周りにサクラソウが咲いていた。なんでこんな場所に存在するのか不思議だが、溝の反対側にも生えていて実生で勝手に増えているようだ。白い花の個体もひとつだけ見た。下山中の唯一の慰めとなった。

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サクラソウ 12:28


道路沿いの進入禁止の空き地から砂防堰堤上のゴーロに降り立ち、きれいな水流で顔を洗ってスッキリ。白岩渓流園も大鳩園キャンプ場も3月に入ってからの営業開始らしく、ひっそりとしている。

名郷に入ると「西山荘 笑美亭」の看板在り。朝見た「関係者以外立ち入り禁止」の布告主はてっきり右岸側にあるものと思っていたのだが、営業の本体は左岸側の集落にある山荘民宿である。この民宿のことを調べた過程で「名郷」という地名が飯能市の住所にはないことを知った。旧名栗村の地名は通称としてバス停や地図上に残ってはいるが、2005年に飯能市に編入した際に行政上の地名は上名栗と下名栗だけになってしまったようだ。

車の後部ハッチを開けたら地形図が残っていた。脱いだジャケットをしまうときに置き忘れたのではなくて初めから所持していなかったとはね。半分しか目的達成できなかったけれども、忘れ物を回収しに行く必要がなくなったという意味ですっきり。秋になったら残りの区間を歩いてみるつもり。

山野・史跡探訪の備忘録