旗川中央尾根の一部(2021年4月)

年月日: 2021年4月3日(土)

行程: 大戸川の四阿出発(08:00)〜 枝尾根・標高430m(08:30 - 08:41) 〜 標高530mで崖で行く手を阻まれる(08:55) 〜 標高580mで主尾根に上がる(09:17) 〜 630m級ピーク(09:35) 〜 650m級ピーク北の鞍部(10:00) 〜 700m級ピーク(10:25) 〜 680mの肩で進路を誤り30分程度ロス 〜 630m級鞍部(時刻不明) 〜 尖がり岩を目前にして退却(12:09)〜 ネット最上部で昼食(時刻不明)〜 作業林道終点(13:28) 〜 大戸川沿い車道(13:35)〜 蓬莱山神社に立ち寄り 〜 帰着(14:15)

2004年1月に一泊で小戸川右岸尾根と大戸川左岸尾根を周回したことはあったが、その中間の尾根(旗川中央尾根と仮称する。)は未訪のままとなっている。先行記録を探す気になればいくつか出てくるだろうし、過去に拝見したことがあったかもしれない。幸い旗川中央尾根に関する記憶が全くないので行き当たりばったりの自分本来の山歩きが楽しめそう。栃木は午後から夕方にかけて晴れとの予報につられて、血糖値対策の山歩きにでかけた。

事後に調べた結果、2004年に烏ヶ森の住人さんが熊鷹山から630m級鞍部まで下っている。近年では2016年にふみぃふみぃさんが2回に分けて下った記録、2018年に瀑泉さんが通しで登った記録がある。その他、ヤマレコやYAMAPにも記録があるそうだが未確認。以降、事後に照会して得た情報及びそれに基づく記述を青字で示す。

できれば尾根末端から取り付きたいところであるが、過去の因縁があって作原の住民と関わりあいたくない。送電線鉄塔巡視路を利用して尾根に上がる代替案を持っていた。旗川沿いの道路を走行する間、山際に延々と金網が張り巡らされているのを見てモチベーションが下がる。さらに大戸川流域にはヤマビル注意や入山禁止の表示がたくさんあってモチベーションダダ下がり。

大戸川の奥の方は金網なさそうだが、送電線の近くには橋が無いし、巡視路の標示も見当たらない。さらに少し進むと四阿の先の分岐で蓬莱山トンネルに向かう道路が通行止め。四阿の近くに車を置いて、どこから取り付こうか思案。目の前の尾根は取り付きが急峻で危険。その北側の近年伐採された谷をしばし登ってから左側の尾根に上がると比較的楽に登って行けそう。

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荒廃した谷


谷は伐採して以降植林されておらず荒れるに任せている。種名不明だが、植物の種子がべったりくっつく。こいつ、丹波楯山の林道にもあったな。

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枝尾根の勾配が緩む標高430m地点に上がった。たった130mの登りで汗がしたたる。10数分、朝食休憩。この辺りも植林される前は炭焼き用の雑木林だったらしい。

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このまま順調に登っていけると思っていたのだが、標高530mで大きな崖に行く手を阻まれる。左右どちらも巻けない。

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標高530mで行く手を阻む崖


この辺りは主尾根の東側(大戸川側)直下が断崖状になっていて這い上がれない。植林斜面の獣道を追って100m以上南の膨らみに移動して主尾根に上がった。場所は標高580m地点。

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主尾根到達地点


大戸川側の急傾斜地には、オオヤマザクラには及ばないが低地のヤマザクラよりも色の濃いヤマザクラの木がたくさんあって満開であった。一方、小戸川側斜面はほとんどがヒノキの植林である。630m級ピークに至って初めてアカヤシオを見る。

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630m級ピークから見る奈良部山


数は多くはないが、尾根の縁に花付きの良いアカヤシオを楽しめる。アカヤシオ見たのは2年振り。まだ蕾も残っていて、一番美しく見えるときに出逢えたようだ。

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650m級ピークの北側は崖状で直進は無理。左側のヒノキの実生幼樹の藪を下ってみたが、鞍部に続く緩斜面まで安全に降りられそうにない。支点となる樹木があるのでせっかく持ってきたのだからと思い懸垂下降の装備に7年ぶりに世話になった(瀑泉さんの記録では「ロープは無くても簡単に下れる」とのことだが、この場所だけは100%の安全性を確信できなかった。)。その先のピークの下りも傾斜がきついがここはロープ無しでも問題ない。

700m級ピークでネットが出現する。大戸川側に開く谷全体が比較的若いヒノキ植林地であり、谷の開きの部分は最近伐採されたばかりのようである(烏ヶ森の住人さんは2004年にこの谷を下っている。当時は伐採されたばかりであったから、植林されて少なくとも15年は経過している。)。標高680mの肩までネットに沿って下ったのだが、ヒノキの藪で分岐を見落とし、西側に分岐する顕著な尾根に引き込まれた(瀑泉さんと同じミスを犯した。)。岩がちで植林はされていない。アカヤシオが満開の場所まで下ってから、右手に見える高みが辿るべき尾根の続きであることに気付いた。体力と時間を余計に消費したけれども今日一番のアカヤシオの群生を見たと思えば惜しくはないか。

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標高670mから見る旗川中央尾根の続き


ネット沿いに下っていくと鞍部から先は尾根の両側がヒノキ植林地となる。

もう危険個所はないと思い、ハーネスをしまって順調に尾根を辿って行ったが、地形図上の第2の780m級ピークに相当する場所で嫌らしい岩場が出現。左右どちらも巻けない。

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真正面から取り付くのはやや危険。最初は左手の凹みを蛇のように這うツガの木の根と腐った木の株を頼りに体を持ち上げ、ツガの木に掴まって立ち位置を確保してから、傾斜する岩表面にある唯一の足掛かりを頼りに西側に回り込む。この辺りで特別ピンクの濃いアカヤシオを見た。

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アカヤシオは危険個所のありかの予告信号みたいなもの。尖った岩が稜線上に鎮座している。その手前の岩は両側が切れ落ちていて巻けない。岩に上がってしまえば尖った岩までは到達できるかもしれないが、平たい岩場ではないので万が一滑ったらアウト。尖った岩場は東側に棚がありそうだが、棚に下るまでが危ういし、棚の幅も不十分。棚から堕ちたら軽傷では済まない。自身が設けている安全基準を満たさないし、天気も冴えないのであっさり退却決定。

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危険個所左側(西側)
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危険個所右側(東側)


こんな場所突破する人はいないだろうと思ったら、前述のご三方を含む何名かの方が通過しているのに驚いた。烏ヶ森の住人さんの場合、この場所に関する記述は「突然大岩に突き当たる。巻き道を探すも両サイドとも切れていて難しい。思い切って岩に攀じ登って、何とか通過する。次から次に大岩が現れ、岩場を越すのに15分要した。今日は危険箇所はこの一箇所のみであった。」だけ。しかもたったの15分で岩稜帯を抜けている。ここを突破しないと帰れないってことで緊張感を持って一気に抜けてしまったが故に、詳細が記憶に残らなかったのかもしれない。当時の烏ヶ森の住人さんより現在の自分の方が若いはずだが、真似できませんな。

先ほど登った岩場はヒノキを支点としてロープで安全を確保して下った。一度通ってルートが確定しているから迷いはないが、初めて遭遇してロープ使用せずに下ったら怖いだろう。岩表面が傾斜しており、足掛かりが得られるか判らない状態で足を下すのだ。滑ったらアウト。

ネット最上端の標高670m地点まで戻ってきて食事しながら下山ルートを思案。大戸川側の斜面は思わぬところで岩場が出現するので地形図の等高線の信頼性が低い。現在地からネットに沿って尾根を下っていくと、標高450m前後で行き詰ってネットを破らない限り下に抜けられない可能性がある。

途中退却したので時間も体力も十分残っている。確実性を期して700m級ピークの南、標高670m付近から下るつもりで700m級ピークに登り始めた。ネットには何か所か穴が開いておりネットの存在意義が失われている。獣が中に入ろうとして破ったにしては上から下まできれいな切り口に見えるのでシカの仕業ではないだろう。クマが棲息できる環境ではないし、ネットを破ってまで中に入り込もうとするおバカなクマがいるとも思えない。真相は如何に?

途中の見晴らしの良い場所で谷の下方を見通せる。最近伐採された場所の上端に尾根通しで降りられそうである(実はこれは勘違い。一つ北隣の枝尾根末端部だった。)。再び鞍部に下りて昼食休憩した場所まで登り返し。

ネットに沿って枝尾根を下っていくと半ば予想した通り険しい岩場の上に出る。岩場の右側の土壌がガサガサした場所を下って作業道の末端部に抜けた。下ってきた枝尾根の左側は急峻な沢で涸れ滝になっている。危険個所だらけの山域であると思う。

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涸れ滝の左側を降りてきた。


伐採地や谷の底はスギの枝屑だらけ。

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作業道
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大戸川沿い舗装路への接続点


大戸川沿い道路に抜け、途中で大戸川の川原で顔洗いしてリフレッシュ。ヤマブキが綺麗だ。蓬莱山トンネルは通らずに川沿いの旧道に入った。岩場の下に矮小なキンポウゲ科の花を見る。

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トウゴクサバノオ
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トウゴクサバノオ


蓬莱山は実に陰気な場所だ。社務所らしき建物は老朽化していそう。神社に参拝した後で朱塗りの建造物も覗いてみたが何もない。これが観光スポットなのか?駐車場には数台の車があったが、外国人の家族とルアー釣り以外の人は見かけなかった。ここから東蓬莱山に登れるようだが、ちょっと危うげな感じがする。

本日は過度に疲れの残らない6時間程度の行動で、血糖値対策の山歩きとしては最適。道の駅「どまんなかたぬま」で仮眠休憩してから順調に帰宅。

期待以上のアカヤシオを鑑賞できたので今年は足尾に行く必要がなくなった。そろそろヤマビルが活動しそうなので、春の佐野市の山歩きはこれでおしまい。岩稜帯に再挑戦するつもりはないが、秋になったら奥の領域を部分的に探ってみようか。

山野・史跡探訪の備忘録