年月日: 2021年8月26日(土)
行程: 埼玉県森林科学館の駐車場(08:14)~ 遊歩道分岐点・標高約1130m(09:37)~ 1359mポイント(10:35)~ 1350m級ピークで退却(10:59)~ 展望小屋(12:00)~ 帰着(13:15)
2週間前に旧中津川林道を視察に行った際、埼玉県森林科学館の少し先にある吊り橋の上に何名かの人の姿を見た。地形図には吊り橋から尾根を登って中途半端な高度から大若沢に下る目的不明の破線路が記されている。こんな場所に行く人などいなさそうに思えたが、Google マップでは展望小屋のマークが示されているのでハイキングコースらしい。等高線表示を信ずる限りハイキングコースの最高点から尾根伝いに白泰山まで行くことは容易に思えるが、このときは山歩きの対象とは考えていなかった。
緊急事態宣言中に大宮ナンバーの車で栃木にアユ釣りに行ったら地元民に嫌がらせされかねない。年券買ったのに今年は一度もアユ釣りせずにシーズン終わってしまうかも。気乗りはしないがクソ暑い中、埼玉県内で徘徊するしかない。土曜日に埼玉県警の遭難に関する情報を見ていたら、今年の6月に大若沢で死亡事故が発生していたことを知った。大若沢とは確か埼玉県森林科学館の近くにある沢だったはず。どんな場所なのか興味を持って調べているうちに、再び地形図の破線路に着目。これを利用すれば白泰山まで容易に行けそうに思える。白泰山避難小屋から北に(中津川方面に)向かう踏み跡らしきものがあったような記憶がある。その気になればこの尾根を辿った記録がいくつか検索できるのだろうが、先行者の記録を見たら興味が失せてしまうであろうし、危険行為を伴わない様子見程度の山歩きなので敢えて予備調査はしない。
雨雲の動きを見て午前8時過ぎには雨が上がることを期待して中津川峡入り。2週間前に較べると降雨量が少なかったみたいで、持桶トンネルの先の中津川左岸の崖から流れ落ちる水流は消えていた。
たつまの吊り橋を渡ると遊歩道の案内がある。遊歩道はよく整備されており、土留めの階段が設けられている。急勾配でジグザグに高度を稼ぐ区間は尾根西側の急斜面をトラバースするが、道幅があるので恐怖は感じない。
出発時の気温は20℃。雨が上がったばかりで湿度が高く、無風。取り付きの70mの急登がきつい。登り始めるやすぐに猛烈に発汗して熱中症気味になった。気持ち悪い。この調子では遊歩道の最高点まで体が持ちそうにない。格好を気にしている場合じゃない。階段は一段毎に両足を揃えて交互に足を出し、普段の3分の1程度のペースでノロノロと登っていった。微風が得られる尾根の肩では大休止して熱冷まし。今の時期登る人がどのくらいいるのか不明だが、地面の乱れを見る限り今日の先行者はいないようだ。見どころはなさそうなので、おそらくこれからも登ってくる者はおるまい。
この尾根は昔から人の手が入っているようだが、尾根筋と西側斜面は広葉樹林で、東側の急な斜面の標高950m辺りまでが比較的若いヒノキ植林になっている。
道のど真ん中に食べごろのチタケを発見。8月前半が旬のキノコだからその存在を期待していなかった。帰りはチタケ探ししようか。
標高1100m手前で尾根筋から逸れて西側の苔むした源頭部をトラバースする区間は石ころが多くて少し歩きにくい。道が二手に分かれ、道標に拠ると下の道は展望小屋に至り、上の道を行けばシャクナゲ群生地があるらしい。上の道を進むと下方に展望小屋が見えた。
一本のシャクナゲすら見かけることなく地形図の破線分岐点に至った(標高約1130m)。現役の下側の遊歩道はこの先、斜面をトラバースしてから大若沢休憩所に向かって急降下していく。通行止めのロープの先には、廃な雰囲気の漂う道が上方に続く。
朽ちた階段の道をしばらく登ると道標に至る。尾根上には明瞭な道が視認できない(左側斜面にあるのかもしれない)が、かつて白泰山避難小屋に至る登山道が整備されたことは間違いない。道標は通行不能と読める。
地形図上からは危険個所の存在を読み取れない。既に大量に発汗しているが、通行不能の理由を確かめたいので、せめて1561.1m三角点ピークまでは行ってみようと思った。
上側破線路は大若沢奥に向かってトラバースし、右隣の尾根筋を回り込んだ先で下っていく。ここまでシャクナゲを一本も見ていない。いったいどこにあるのだろう。大若沢に下る途中にあるのか?どう考えてもシャクナゲなんか自生しそうにない環境だ。鬼怒川温泉の花の山遊歩道みたいに人為的に植栽したものの全て枯れてしまったのではなかろうか。
上側破線路が下っていく手前で道のない尾根にとりついた。少し登ると道標のあった尾根筋と合流する。100m程度適当に尾根筋を登っていく間、青い紐の目印や、誤進入防止のために張られた古いビニール紐を何か所かで見る。再び熱中症気味になり軽く頭痛もするのでノーシン服用してしばし熱冷まし。
太いワイヤーが残されているが、伐採痕を見ないので古い時代のものであるようだ。道標から上がって来ると思しき細い道に合流し、以降は尾根上まで道型をなぞる。
尾根上は岩がちの痩せ尾根ではないのにヒノキ似の針葉樹の林になっている。道は追えるが、辿る人が少なく馬酔木に被われている。
1359mの手前であったと思うが、尾根東側をトラバースする場所が少しだけ嫌らしい。幅は狭いが傾斜がついていないので慎重に通過すれば問題ない。
1359mピークは樹木に遮られていて写真撮影には向かないものの、周囲の地形を確認可能。県境の山々や赤沢山も見える。なんと、1561.1m三角点ピークから大若沢(金山沢)奥部にかけてカラマツ植林になっているようだ。アクセスが容易ではない場所でよくも伐採・植林作業できたものよ。
地形図の等高線記載からは尾根の起伏が緩そうに思えるが、1359mピークの先は急勾配である。1561.1m三角点ピークまでたいした距離ではないが、帰りの体力が持つか不安で進むべきかしばし躊躇。せめて1561.1m三角点ピーク麓の植林地まで行ってみようと踏み出したものの、踏ん張った左足のふくらはぎが軽く痙攣した。そろそろ限界だな。。
フラットで歩きやすい快適な尾根を期待してきたのに、岩がちで痩せておりアップダウン多し。なんと最初の岩場の西側に鎖場が出現。鎖場の手前に木の根で滑りやすい場所がある。ステンレス製の鎖はピッカピカで廃道とはとても思えない。
1350m級ピークの登りに2番目の鎖場在り。登りは鎖に頼る必要はない。
1350m級ピークから先も雰囲気悪そう。先に行く気力が失せた。今朝、コンビニでミネラル補給になる食物を仕入れるのを忘れたので、これ以上発汗したら体に異常をきたして動けなくなりそう。1350m級ピークで退却決定。あとはチタケ探しに専念する。
山下りはチタケの在処がよく判る。登るときに何もなさそうだった場所で10本程度の良型を収穫。その後、遊歩道でも数本追加。
帰りに展望小屋に立ち寄り。古びた感じがあるが、まだ老朽化は進んでいない。ジメジメして陰気な場所に在るため蚊が多い。南天山、赤岩峠~両神山方面が見える。
安物のコンデジズームではうまく撮れん。
衣服の上をピコタンするものを見て反射的に払い落とした。秩父にはヤマビルがいない。正体は尺取り虫。子供の時分は「尺取り虫に尺を測られると死ぬ。」なんて脅されて怖がっていたものだが、触ると木の枝に擬態するのが可愛い。
午後になって尾根道にはそよ風が吹き、蚊やアブを気にすることなく落ち着いて休憩できる。この時期に秩父の尾根道でめぼしい植物は皆無なものだから、ヤスデやザトウムシのような存在でも妙に可愛く思える。休憩中に隣の樹木の顔の高さの位置に黒いヤスデを発見。
遊歩道上で橙色のヤスデ発見。こいつは動きが素早い。
標高850m辺りで作業着姿の男性が木につかまって、「エイッ」と声を上げながら、枝先に長い捕虫網を伸ばしていた。山で遇ったのはこの人だけ。
左足の不調で下りはトボトボ歩きだが、意識的に体のバランスをとって且つバネを利かすように歩くことで、腸脛靭帯炎の強い痛みが生じることはなかった。登りと同様に、階段は一段毎に足を揃えてノロノロ。それでも汗がしたたり落ち、何度も汗拭きタオルを絞る。吊り橋手前の急降下区間は途中から足がガクガク。高温・高湿度・無風の山歩きは標高差650m程度でも体の限界に近かった。
森林科学館の駐車場は満車状態。緊急事態宣言下とは思えんな。気温は24℃だが日当たりが良くて仮眠には向かない。静かで窓開けて仮眠できそうな場所を探して大洞林道に寄ってみたのだが、入り口に岩が転がっていて通せんぼ。その手前の広場の木陰で休憩しようとしたが、こちらは気温29℃。寝られたもんじゃない。おまけに隣にやってきた車のオヤジがエンジン掛けたままで外でタバコふかしはじめた。休憩をあきらめて帰路につく。途中で見返りの滝を観瀑。
早めに帰宅して自分でチタケを調理。美味なり。
チタケの収穫はあったものの代償は少なからず。翌日以降に体のむくみや唇の膨満感が生じなかったので今回はヘルペス発症はないだろうと思っていたのだが、3日後(水曜日)に下唇に軽くヘルペスが出た。筋肉痛が完全に消えたのが5日後(金曜日)。夏山はとても体に悪い。
事後に調べた結果、自分が途中まで歩いた尾根は「タツマノ尾根」、1561.1m三角点ピークから白泰山避難小屋までを「シャクナゲ尾根」と称するらしい。ウェブ上の記録を見る限り、「シャクナゲ尾根」の雰囲気は自分好みではなさそう。タツマノ尾根に見所はないし、チタケ採りにわざわざ行く必要もないので、此処に再訪する可能性は低いと思う。