年月日: 2021年11月7日(日)
行程: 大戸川の四阿出発(07:53)~ 箱淵橋手前の尾根取り付き(08:40) ~ 主尾根到着・標高880m(10:45)~ 熊鷹山(11:55 - 12:05) ~ 林道・作原沢入線の峠(12:50) ~ 帰着(15:30)
8月、9月は新型コロナによる緊急事態宣言下で他県に出かけるのを控えていたし、引っ越しに伴う手続きに忙殺されて遠出する余裕のないまま10月が過ぎた。10月末に帰省を済まし、仕事の納期も達成して気持ちが落ち着き、ようやく他県に遊びに行こうかという意欲が復活。7日(土)は良い天気だが(在宅)出勤日。翌日曜は曇りの予報で出かける予定を立てていなかったのだが、7日の終業後に天気予報を確認すると栃木県は晴れの予報。ちょうど大戸川の奥部が紅葉の盛りであろう。4月に旗川中央尾根を辿って熊鷹山に行こうとして、危険個所で退却。ヤマビルの出ない晩秋にその続きを実行しようと思っていた。ようやくその機会到来。
住所が変わったので、新4号を北上し、国道384号に入り、渡良瀬遊水地沿いの県道9号(佐野古河線)で藤岡を経由して佐野入り。佐野古河線は栃木在住時、女房の実家に行く時によく使っていた道で懐かしい。
大戸川沿いの道は恵比寿橋から先が依然として関係者以外通行止め。4月のときと同様、四阿から歩いていく。法面に目立つのはマツカゼソウくらい。奥武蔵同様、マツカゼソウはチャート質のザレた表土を好むらしい。
堰堤にたまった土石で形成された広いゴーロにテントが3張。近くにそれぞれ単独行らしきロードバイクが3台停めてあった。一台は野田ナンバー。釣りの時期ではないしゴーロに何も見るべきものはない。のんびりテント泊するのが目的なのだろう。重いロードバイクをどうやって通行止めの鎖の下を潜らせたのだろうか?バイクなら蓬莱山の方から通過できるのか?お咎めはないみたいだ。
362mポイントを過ぎた辺りで山仕事に向かうらしき軽トラの運転手に声をかけられた。6月の渓流釣りのときと似てるな。「熊鷹に登るの? クマ出るから気を付けてね。俺らは銃持って入ってるんだよ。」とのこと。
取り付き予定地に到着。土留めの段があって尾根末端部の植林斜面に簡単に上がれない。これを嫌って尾根突端を回り込み、箱淵橋に近い場所から取り付いてみたのだが、上方に急勾配箇所があって退却。道を戻って土留めの端からピッケルも使って体を持ち上げた。
最初はただの植林斜面ですんなり登っていけると期待したのであるが、すぐに尾根幅が狭まり、両側に崖のような急斜面を見下ろすキレットに至り植林が途切れる(気持ちに余裕がなく画像無し。)。標高500m前後であったと思うが、ホールドを利用して岩稜の瘤を乗り越えないと先に進めない場所が在る【36.535309N,139.485366E】。その先にも似たような場所がありそうで、眼前の瘤を乗り越えたとしても怖い思いして戻ってくることになる可能性大。
左側(南側)斜面を一気に巻いていけそうに思えたのだが、こちらも命取りとなりそうな場所で行き詰った。丸腰でキレットまで戻るのは不可能だ。本日の行程の最後の山下りで使う可能性に備えて持ってきた懸垂下降の装備に初っ端からお世話になった。結果的にこの日の行程で懸垂下降をしたのはこの場所のみ。
さて、林道まで戻るしかないのだろうか?一度怖い思いして感覚が麻痺したらしく、最初敬遠した岩稜の瘤を乗り越えてみた。乗り越えること自体は容易。案の定、その先にも似たような場所が控えていたが、ここも突破可能。その先は勾配緩く尾根幅も広がり危険個所は皆無。尾根南側が植林地、北側が広葉樹林。標高600mから900mにかけてミネカエデやオオイタヤメイゲツが紅葉真っ盛り。
標高700mから広葉樹林の尾根の最後の詰めにに入る。シカの一団が逃げていく。藪が無く食い物なさそうだが、いったい何を食べて生きているのやら。標高750mから上の勾配がややきついが立ち木が豊富で危険度は低い。875mポイントの北側で主尾根に抜けた。
スパイク無しのトレッキングシューズで筋力に負担がかかり、ここしばらく山登りも階段昇降もしていなかったため、ふくらはぎが痙攣寸前。
なだらかな920m級ピークで熊鷹山方面を眺めながら軽食休憩。この先、尾根幅が広がって既に落葉したブナ科の樹木が主体となる。落ち葉を踏みしめて順調に進行。標高の高いところではまだハウチワカエデの紅葉が残っている。
991mポイント辺りから1040級mピークまで小戸川側が植林されている。直登がきついのでシカ道を辿って南南東尾根に向けて斜めに登ってから1040m級ピークに上がった。ここは帰りに使う予定の北東に下る尾根(事後に「白ハゲ口」からのルートであることを把握。)の派生個所である。この辺りから黄色のテープがポツポツと付いており、踏み跡らしきものも認識できる。
標高1,000m辺りでブーンという物騒な羽音がした。顔を上げると目の前に大きなオオスズメバチがホバリングしていてびっくり。スズメバチの巣に近づいてしまったのかと思い、慌てて帽子で振り払って走り抜けたが、追ってくる様子はない。一匹だけだったようだ。既に今年のスズメバチの営巣活動は終了しているはず。今の時期に標高1,000mの高みにどうしてスズメバチがいたのか不思議であったのだが、後日調べたところ、11月は新女王蜂と雄蜂の交尾の時期らしい。ということはあれは新女王蜂だったのかもしれない。
刺されなくてほっとしたものの、オオスズメバチの出現によって本日の行動予定を変更せざるを得なくなった。予定の尾根を下るには先ほどオオスズメバチと遭遇した場所を通過しなければならない。アナフィラキシーショックとは無縁の体質であるから刺されたところで死ぬことはないと思うが、できればお遭いしたくないものだ。再び遭遇して襲われる可能性がゼロではないので別ルートで帰ることにする。
熊鷹山山頂が近づきツツジ灌木の向こうに展望台らしきものが垣間見え、人がいるのが見えた。最高のお天気で人気の山でもあるのに、山頂到着時にいた先行者は男性1名のみ。期待した通り、天気の良い土曜日に登った人が多いのではないだろうか。先行者は小生が展望台で景色眺めているうちに丸岩岳方面に下って行った。
熊鷹山に来たのはほぼ18年振り2度目。展望台に上がった記憶はあるが、こんなに狭いとは。自分の記憶のなんといい加減なものよ。18年前は登山客が多くて落ち着かなくて、ろくに写真も撮らずに山頂を後にしたから、この眺めは初めて見たようなもの。
時刻は既に正午を過ぎている。日の短い秋はそろそろ下山に入るべき時刻だ。さて、大戸川の谷にどこから降りようか。山頂にある案内図には破線路が2本(十二山から三滝、および宝生山から三滝)示されている。上級者向けだそうな。18年前、熊鷹山から根本山に立ち寄って氷室山に向かった際、それらしき道の分岐を見た記憶がない。おそらく一般的踏み跡辿っていくと全く気付かずに降口を通り過ぎてしまうのであろう。そもそもどんなルートなのか予備知識が無い。今の自分の実力で下れなくはないと思うが、晩秋に陽が当らず暗くて冷えた谷底下るのは気乗りがしない。今年のツツジの季節にテントミータカさんが林道作原沢入線の峠から熊鷹山に往復したことを思い出し、ずっと陽光を得られる林道下りの方が魅力的に思えてきた。どちらを選択するかは成り行き次第として、18年ぶりに尾根を北上。
踏み跡はただでさえほぼフラットな尾根を徹底的に巻いていく。18年前は厳寒の1月31日であった。踏みしめられた雪の上を歩いたからおそらくトラバース主体の夏道ではなく稜線部を通したのだと思う。
左手に見える根本山まで時間的に再訪できなくはなさそうだが、18年前の体ではないので自重。ひたすら巻道を行く。時間的に熊鷹山へ向かうハイカーは皆無。十二山に向かうトラバース道に入る手前で休憩中の一組の男女とご挨拶。本日熊鷹山に向かったハイカーは自分含めて10人に満たなかったのではないか。
踏み跡は十二山に相当するピークを西側に巻き、宝生山方面に向かうトラバース道もまたピークの北側斜面を巻いていく。18年前の記憶は全く無い。トラバース道は労力を必要としない反面、死と隣り合わせであることを認識すべき。普通に歩いていれば問題ないと思うが、万が一足を踏み外したら即死。川崎市在住時、大家の奥さんが丹沢のトラバース道で足を踏み外して亡くなった。バランス感覚失った老人は安易に登山道を辿るべからず。藪歩きの方がはるかに安全。
結局、三滝への下山路分岐を目にしなかった。これは想定内。選択肢が限られたので、18年前に存在しなかった林道峠を目指すだけのことよ。当初下る予定であった尾根(白ハゲ口コース)は幅が広いのでカエデ類の紅葉は期待薄。紅葉が期待できる未知の林道を下るのが楽しみ。
林道峠には車が2台。1台は既に持ち主が帰りの準備中。もう1台の持ち主は先ほどあいさつした男女かな。
開放的な群馬県側と対照的に栃木県側は通行止め。ご丁寧に2重になっている。峠近くにある作原共有山林会の記念碑に拠れば平成29年(2017年)竣工とのことだが、2006年末に陣地の近くから大戸川の谷に下った時は既に舗装された状態にあり、通行止めされてはいなかった。2019年の豪雨による土砂流出したのを口実に林道を独占的に利用したいのだろうか。個人的は大変好都合。バリケードの存在は静かな一時が保証されるということでもある。紅葉真っ盛りの大戸川流域を独り占めできるのだ。これ以上の至福はあるまいよ。
林道は日当たり良く眺めも良好。全般的に傾斜がきつく、法面の際はカエデ類の紅葉に適した環境。この辺りの山肌は丈の低いミヤコザサに被われている。青い空と淡い緑の絨毯に残り紅葉が映える。一番良い時に来たのではないか。林道・作原沢入線が開放されていたら紅葉見物の車が多数入り込んだであろう。
標高940mのカーブからの眺めが秀逸。大戸川の谷が真正面に開く。グーグルマップでは絶景ポイントと記載されている。ここから未舗装の林道が分岐する。空中写真を見ると、氷室山南の参拝道を横切って尾根の東斜面の伐採地まで延びているようだ。
標高910mのカーブの辺りではなかったかと思うが、抜きんでて美しい立派なカエデの木があった(ミネカエデっぽいが、樹種未確認)。
陣地西側の谷のカーブから先の林道歩きは2006年末に経験済み。植林地の割合が増えて特に見どころはないが、林道ゲート手前までは陽光が得られて快適。林道ゲートと熊穴橋の中間地点でマタタビの実を発見。虫瘤にならないきれいなマタタビを大量に採取できる場所を知っているのだが、わざわざそれだけのために行く気になれず、もう何年もマタタビの実にお目にかかっていなかった。薬用酒にすべく20分ほどマタタビ採りに興じた。
林道は宝生峠から熊穴橋まで土砂崩れも路肩の崩落も無く、きれいな状態にある。法面に崩落防止の擁壁が設けられている場所は少ないが、チャート質の岩体だから崩れにくいのであろう。法面の植物を食べるためにカモシカが移動することによって落ちた石が転がっているだけ。
三滝に向かう道から青色ジャケットの超軽装備の若い兄ちゃんが下ってくるのが見えた。こちらの存在を意識したのか早足で下って行った。
2006年は遮断の滝や雨乞いの滝を見物しながら下ったのだけれども、今回は滝に興味が湧かず、その案内すら気付かずに通過。宝生水はシアノバクテリアの臭いがして飲み水には不適。
道路の谷側に使われていない広場のような草地がある(後日見た『三滝ハイキングコース - FC2』に学校口広場なる名称の記載があったが、この場所の呼称であるか不明。ざっとウェブ検索した限りでは、その名の由来を示す情報は見つからないし、古い地図にもそれらしき記載はない。夏場の林間学校の類なのか?)。
広場の下流側で地形図記載のない林道西沢線が分岐する(事後に見た記録ではここから登って白ハゲ口コースに合流する人もいるようだ。)。
朝方見たゴーロのテントは無くなっていた。蓬莱山の駐車場や四阿にあった車も自分が帰り支度中に皆帰ってしまった。
往路を忠実に戻って眠気を催すことなく順調に帰宅。