磐梯山・渋谷登山口コース(センターハウスから沼ノ平まで往復、2024年10月)

年月日: 2024年10月25日(土)

行程: 渋谷口・ファミリースノーパークばんだいx2から出発(10:00)~ 沼ノ平(13:00 - 13:26)~ 帰着(15:26)

今年はほぼ毎週末、空き家となった実家の畑や庭を手入れするために春日部から猪苗代に通っている。山歩きの趣味を放棄したつもりはないが、山歩きに時間を割く余裕がない。元々、山歩きより植物の世話の方が好きだから欲求不満にはならない。6月にネマガリダケの筍採りして以降、山から遠ざかっているうちに山に行こうという意欲も湧かなくなった。

秋になって磐梯山に雲がかからない日が多くなった。中腹(標高1,000m前後)辺りが色付いているのが見える。今週は会社のフリーバカンス制度に則りまとまった休みを取得しており時間に余裕がある。金曜は快晴の予報。渋谷登山口コースの現況を確かめるべく、久しぶりに山歩きしてみようと思った。

朝方、畑の手入れを済まして、磐梯山の様子を確認してから渋谷登山道口に向かった。2020年のコロナ禍を機に休業となったファミリースノーパークばんだいx2に向かう舗装道は年々荒れが目立つようになってきている。例年、秋になるとゲレンデの草刈りが行われていたが、この数年刈り払いされておらず藪化が進行。センターハウスも管理されている様子がない。人口減で町にスキー場の再興を支援する余裕はなかろう。このまま廃業するのだろうか。此処には登山目的以外にも山菜採りや気晴らしに毎年のように訪れていたのだが、ここまで荒れてしまうと魅力がないな。

渋谷口ルートの標高1000m辺りまで未舗装林道歩きである。林道は下部ゲレンデの中を登っていく。昔の自分の記録に拠ると、2004年当時は標高840m地点までは車で登れた。2013年には既にゲレンデ内への一般車進入ができなくなっており、センターハウスから歩いていくしかない。2011年の原発事故以来、中通りで捕獲されなくなって頭数が増えたイノシシが、暖冬で積雪が浅くなった会津地方に進出して定着。イノシシによる穿り返しが年ごとに目立つようになった。今年は林道であることが判別できないくらいにボコボコにされている。

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ゲレンデは背丈を超えるススキ主体の藪。琵琶沢側の蔓混りの藪から獣が飛び出してきてもおかしくない雰囲気。山歩いてクマに威嚇されたことはあっても被害に遭ったことはない。護身用の武器を携行し常に警戒を怠らないが、今まで独りで山に入るときに怖いと感じたことはなかった。しかし、一旦山歩きから遠ざかってしまうと、見通しの無い藪の傍らを歩くのがとても気味悪く感じられる。年齢的な要因もあるのだろう。気弱になっているのだ。山中でクマ被害に遭う可能性が高いのは、①親子熊と遭遇した場合、②秋田のようにネマガリダケ藪中で縄張り意識のあるクマと競合した場合、そして③沢中で風下から接近遭遇した場合だろう。食い物無さそうな場所でクマ被害に遭う可能性は低いが、遭遇の可能性がゼロではない。せっかくこの歳まで五体満足で生きてこれたのだ。クマに引っかかれて顔半分失って残りの人生を過ごすことになるのは避けたい。今年、福島県がツキノワグマ出没警報を発令中(12月1日に解除)。猪苗代も人身被害こそ出ていないがクマ出没が相次いでいる。クマ避け鈴を持ってこなかったので、ゲレンデを登っていく間は不意打ちに備えて新規に購入したフルフェイスヘルメットを装着。ゲレンデを抜けて見通しの利く松林の区間に抜けてからヘルメットを脱いだ。

何か所かで山側からしみ出た水でぬかるんでいる。そのような場所では山中であるのにススキではなくヨシの群落が存在する。標高840m地点までは倒木が切除されており、軽トラックなら走行可能な状態にある。比較的新しい轍も見られるので、リフト上部の施設管理のために維持されているようだ。その先は廃林道となり、20年以上前に廃止された第5ロマンスリフト乗り場跡付近では道跡が両脇のアケビ等の蔓藪に覆い隠されており、とても現役の登山道には見えない。初めての人ならここで引き返すだろう。

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第5ロマンスリフト乗り場跡


旧ゲレンデを横切る区間を過ぎて樹林帯に入ると、廃林道上に藪はなくなる。その代りに、所々で倒木が道を遮る。林道建設時に堰き止められて出現したと思しき池の様子は2013年時と変わらない。

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標高855m


沢沿いなら紅葉が期待できそうに思えたのであるが、色付いていたのは琵琶沢右俣沿い標高920mの辺りにあったカエデの木1本のみ。

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廃林道が左にカーブする場所で登山道が分岐する。標高1,000mの辺りではないかと思う。2013年時、分岐点には「渋谷登山口」と書かれた板が置かれていたが、今回は見ていない(見落とした?)。登山道は上方の廃林道カーブ近くにショートカットし、カーブを曲がった先から再度分岐する。この辺りの案内は無いが、廃林道の踏まれ具合を見て誤った方向に進まずに済んだ。地形図上の破線は標高960mの辺りまでは廃林道と一致する。破線はそこから琵琶沢中尾根を真っすぐ登っていくように示されているが、実際に登山道が分岐する場所はもっと先である。標高960mから先は地形図に林道跡の記載がないが、1980年代にオフロードバイクで走行した時の記憶では、廃林道は琵琶沢右俣を横切ってから何度か琵琶沢中央尾根上で折れ曲がりながら最奥堰堤を見下ろす地点(標高1030m付近)まで続いている。1980年代は林道終点に登山道入口があって登山届入れも設置されていた。

登山道はきれいな状態が保たれており、道の両側は藪化していない。標高1100mから1300mの間にあるチシマザサ帯でも道上に新しく伸びた笹を見なかった。今年刈り払ったような跡には気付かなかったが、遭難防止の為に登山道区間だけ最低限の手入れを行っているのかもしれない。

チシマザサ帯で1本だけ鮮やかに紅葉するカエデの木があった。チシマザサ帯の樹木はダケカンバが主体であり、高域は既に落葉して冬の装い。

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長いこと山登りしていないので、すぐに息が上がる。こうなることは予め承知しているので、今回は翌日以降のダメージを最小限にすべく、老人力を発揮してこまめに休憩しながら急登区間を抜けた。沼ノ平の向こうから大磐梯が姿を現すとそれまでの労苦が報われる。

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沼ノ平手前で琵琶沢本流の源流を横切る。この水流は湧水起源と思われるが、栃木の尚仁沢湧水同様、私的には美味しいと思わない。

目標としていた13:00 までに沼ノ平の端に到着。ここまで登山道の案内を一切見なかった。近年環境に配慮してのことかペンキで印を付けなくなったと聞く。新しいペンキ印は見なかったが、古い印であってもガレ場では有効であると感じた。要所に付いている古いリボンも有効である。登山道ではない藪尾根に自己顕示目的で目印をベタベタ付ける行為は許し難いが、一般登山者が利用する正式な登山道では、閉鎖していないのならば必要最低限の案内目印はつけておくべきである。沼ノ平は基本は植生の乏しい裸地・砂礫地であって、断続的に存在する灌木藪も密ではないから移動は容易であるが、渋谷口ルートを利用する登山者が少ないものだからどれが正式な道筋なのかよく判らない。

山頂付近の紅葉の時期はとうに過ぎており、3連休後の平日であるから登山者もそう多くはなかったろう。弘法清水小屋から猪苗代スキー場コースに下ってくる登山者一人が見えた。

沼ノ平は緩やかな起伏を持つ。1406ポイント(此処の行政上の地名は沼ノ平ではなく松峯)に寄って沼ノ平北側を一望。

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秋に沼ノ平に来たのは初めて。雄国沼周辺よりも標高が300m高い沼ノ平にもグミの木がたくさん生育していることを初めて認識した。グミの木は開けた場所を好み、低地でも開析された場所に最初に侵入する樹木の一つ。グミ酒作るほど採取するつもりはなく、幾らか秋の自然の味覚を賞味。

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櫛ヶ峰の山頂に人工物らしきものが見える。最後に櫛ヶ峰に登った2015年にはなかった。安物コンデジで電子ズーム拡大すると太陽光パネルが確認できた(*1、*2)。

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(*1)気象台が磐梯山火口観測のために設置した火口カメラであるとのこと(https://www.jma-net.go.jp/sendai/information/nyusatsu/3-9opencounter/r4/siyousyo04_51.pdfを参照。)
(*2)監視カメラの映像はライブ配信されている(https://www.data.jma.go.jp/vois/data/obs/volcam/volcam.php?VC=21502を参照)。

沼ノ平の中央の沼と北側の沼はともに、残雪期に緑色に染まった雪氷に覆われる。北側の沼は西隣にある噴気孔との関係がありそうで、水に溶け込むイオン成分で緑色がかっている。畔に草が生えているので強酸性ではないのかもしれない。中央の沼は夏場には干上がっていて水の色を確認できない。

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中央の沼(背後が沼ノ平の最高点・標高1420m)
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北側の沼


下山途中、林道傍らでキノコの株を発見。色合いやなめらかな感じは記憶にあるオリメキに似ているが、2011年に食べたのが最後だから確信はない。3つあった大きな株のうち、2株を持ち帰った(帰宅後に調べた情報では、柄にツバがあるのがナラタケ、ないのがナラタケモドキ(オリメキ)であるそうだ。よく見かけるナラタケは色が茶褐色で鱗片があっておいしそうには見えない。正式に分類されているのか不明であるが、ナラタケには複数種あって、採取したキノコはそのひとつらしい。食べても問題ないキノコなので、茹でて大根おろしにして数回に分けて完食。美味なり。)。

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ナラタケ


昔見た登山届け入れはセンターハウスの前に放置されていた。閉鎖理由の土砂崩れした場所は存在しない。

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渋谷登山口コースは管理状態にあるとは言い難い。正式に廃止されてはいないが、猪苗代観光協会のページでは「登山道がわかりにくく、かなり知識のある方でないと迷いやすく、上級者向けのコースです。」と紹介されている。個人的に魅力的な場所であっただけに、荒廃していくのが残念に思う。

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山歩きの体ができていないから、沼ノ平まで標高差800m弱を往復しただけでも疲労感強し。今の体力で渋谷登山口コースで山頂まで往復するのは無理だな。往路の登りに時間をかけ、下りは小刻みに足を繰り出したのが良かったようで、腸脛靭帯炎は発症せず。翌日以降の筋肉痛も程度が軽くて済んだ。

山野・史跡探訪の備忘録